「治る」ってどういうこと?

こんにちは。

前回は、神経まで達したむし歯をMTAという材料を用いて治す治療法についてお話しました。

今回はむし歯治療を例に、歯科治療の「治る」についてお話します。

このことを頭の片隅に置いていただくことで、歯科医院選びや治療を受ける際に、
少しでもお役に立てればと思います。

虫歯治療の手順

前回まで2回に分けて、私が行っているMTAを用いた深い虫歯の治療手順をお話しました。

  1. 応急処置
  2. クリーニング
  3. 治療中の感染防止のための必要な歯の形の復元
  4. 治療中の感染防止のためのラバーダム防湿
  5. 虫歯を削る
  6. 痛んだ神経をカット
  7. MTAで神経をカバー
  8. 歯の形を樹脂で復元

ざっと分けると8つのステップでした。

最新の材料を使うと治る?

現在、神経まで達する深い虫歯に用いる材料として最も信頼できるものが、MTAという材料です。
MTAを使って神経を残す治療は普及しており、当院でも行っています。

 

では、従来の材料が良くないのでしょうか?

私の答えは、ノーです。
従来の古典的な材料を使っても、「ちゃんと」治療すれば神経を残せることも十分あります。

 

「ちゃんと」とは、どういうことでしょうか。
そのことを理解するには、体を治すとはどういう事かを知る必要があります。

治すのは誰?

治すのは、材料や治療そのものではありません。
本来私たちが持っている治癒力のみが、体を治すことができます。
材料や治療は、治癒力を最大限発揮してもらうための環境作りのためにあります。

 

例えば、むし歯で歯が痛いこと。
痛いのは歯の中の神経が、傷んでいるからです。

痛んだ神経は、むし歯と隣り合わせにいながら、けなげにも自ら治ろうとしています。
ところが、ムシ歯菌からの刺激を受けて、治りたくても治れないでいます。
かわいそうですね。

そこで治療の登場です。

治療の役割は、
痛んだ神経が治ろうとする治癒力が最大限発揮されるために、
ムシ歯菌を取り除き穴を埋めて刺激を遮断する事で
、治るための環境を整えることです。

つまり、
治療が治しているのではなく、体が治しているのです。
治療は、体が治るのを支える存在なだけです。

 

しかし、もし治ろうとする方向と違う支え方をしたら、治癒力は最大限発揮できません。

 

生体の反応、治癒機転を細胞レベルで理解し、
各材料、治療法の特徴を熟知して使い分けることが、適切な治療といえます。

生体の治癒についての深い理解と、治癒に適した材料による治療の組み合わせがあってこそ、
理想の治癒に結びつくことができます。

治癒についての理解がないままに、最新の材料や方法を使っても、
うまく治らないことは十分考えられます。

最新の材料よりも大切なこと

そして、
治癒力を十分に発揮できるようにするためには、
治癒についての理解とともに、「清潔な環境を作る」ことがとても大切です。

冒頭の8つの治療手順のうち、MTAが登場するまでの6つのステップは、
治癒力が発揮されるための、「清潔な環境作り」のために行うものです。

「清潔な環境作り」は、歯科治療の基本です。

「ちゃんと」治療する、と表現したのは、この歯科治療の基本を確実に行う、いう意味です。

MTAを使う事よりも、この基本的な例えば6つのステップの方が大切と言っても、言い過ぎではありません。

6つのステップの後でならば、MTAではなく従来の材料を用いても、
神経を残せる可能性は高くなります。

確実な治療のために

そしてその各ステップを「ちゃんと」精密、確実に行うために、

を受けることをおすすめします。

もちろん、これらを満たしたからといって必ずいいわけではありませんが、最低限おさえておきたいポイントです。
歯を守るための治療の基準として、参考にしてみてください。

surgitel8

拡大視野下の診療では、裸眼ではできないことが行えます。

 

今日は、「治る」の意味と、そのために必要な治療のポイントについてお話ししました。

このブログで治療の話をするとき、毎回、拡大診療の重要性について触れますが、
本当に大切なことなのです。

皆さんができるだけ再治療を受けず、その結果、失う歯が少なくなるために必要なことです。
これからも、大切な歯を守るために必要なことを、お伝えし続けたいと思います。

 

皆さんがお口にストレスを感じることなく、楽しい時間を過ごせますように。
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁