歯周病と全身の健康

こんにちは。

ここ数年、「歯周病と全身の健康」というキーワードで様々な情報を得る事ができるようになってきました。

テレビや雑誌、新聞でそのような記事を読んだ事がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今日は、歯科と全身の健康についてのお話をお話したいと思います。

将来、健康について後悔しないために…

2012年に、雑誌「PRESIDENT」(プレジデント社)が、
55〜74歳の男女1060人(男女比約7:3)を対象に、

「人生の振り返り」に関するアンケートを行った結果、

健康について後悔している事の第1位は、
「歯の定期検診を受ければよかった」

…、人生の先輩方に1位でこの結果を出されると重みがありますね。

 

この結果は、私たち歯科医師から見ると、とても納得するものです。

人生の後半でお口が悪くなった方と、そうでない方の、日常の楽しみが大きく違う様子を、
我々は日々、目の当たりにします。

やはり、自分の歯で食事ができる方は、元気な方が多いように感じます。

 

ちなみに

2位は、「スポーツなどで体を鍛えればよかった」
3位は、「日頃からよく歩けばよかった」
と続きます。

忙しく過ごす毎日の中で、なかなか習慣化しずらいものばかりですね。
日頃から、自分の人生の意味について考える時間をとって、過ごしたいものです。

PRESIDENT Onlineの記事はこちら↓
PRESIDENT Online (http://president.jp/articles/-/12332)

お口が健康だと全身の健康を維持しやすい

先ほどの後悔の先にあるかもしれない、他のデータを見てみましょう。

  1. 東北大学・加齢歯科学講座の調査
    ・50歳以上の約3万人を調査。
    ・残っている歯が4本以下の人は、20本以上残っている人に比べ、1ヶ月間の平均医療費(歯科除く)が、約5600円高い。
     
    →残っている歯が少ないほど、1ヶ月の平均医療費(歯科を除く)は高くなる。
  2. 香川県歯科医師会の調査
    ・残っている歯が4本以下の人は、20本以上残っている人に比べ、年間総医療費が約1.5倍かかる。
    ・歯周病が重度になる程、医療費が高くなる。
    ・歯周病が重度になる程、高血圧、糖尿病などの生活習慣病にかかる医療費が高くなる。

(上記2つの資料:米国抗加齢医学会認定医・千葉県開業、森永宏喜先生の講演会資料より)

この2つの調査でいう、「医療費が高い」という事は、
病気になって病院にかかっているということです。

歯をたくさん失うと、全身の病気も生みやすいと言えるでしょう。

歯周病と全身の病気の関係

健康バラエティ番組などでも、最近は特によく取り上げられる内容ですね。

詳細のメカニズムは、ここでは割愛させていただきますが、
歯周病と全身疾患の関係は、

  • 糖尿病:糖尿病は歯周病を悪化させ、また、歯周病は糖尿病を悪化させる。
  • 循環器の病気:歯周病が重症化した人は、脳卒中・狭心症・心筋梗塞などの循環器病発生率が、1.5〜2.8倍高い。
  • 骨粗しょう症:骨粗しょう症の人は歯周病にかかると悪化しやすい。歯周病治療により、骨粗しょう症の進行を抑えられる可能性がある。
  • リウマチ:歯周病とリウマチの病状は双方向で関連している。
  • 誤嚥性肺炎:歯周病菌が気道経由で肺に感染。
  • 早産・低体重児出産:重度歯周病にかかっていると、早産・低体重児出産のリスクは約3.5倍。
  • ED:EDでない群の歯周病罹患率9%に対し、ED群の歯周病罹患率は27%。

と、多くのことがわかってきています。

この他にも、疑われている疾患との関係はまだあるようです。
今後、はっきりしてくることがたくさんあるかもしれませんね。

歯周病が全身疾患に影響しやすい理由

たくさんの病名が並びましたが、まとめると、

歯周病という、穏やかな慢性炎症がずっとあると、離れた場所でも病気が起こる。

ということです。

 

慢性炎症の存在により、様々な場所で病的な反応が促進されることがわかっています。
慢性炎症と、心疾患、ガン、アルツハイマーの発症には、関連があることもわかっています。

そして、慢性炎症を起こす病気はたくさんありますが、
そのうちの一つが歯周病というわけです。

 

歯周病は、重症化するまで自覚症状が出にくい病気です。
中程度までは、なかなか自分では見つけることができません。

その特徴から、
気づかないままに進行した歯周病による慢性炎症が、数年にわたり長時間続くことで、
全身では病的な反応が促進されている可能性があります。

また、細菌感染が原因のむし歯も、慢性炎症を起こします。

 

歯や歯ぐきの健康を保つということは、口から慢性炎症をなくすことを意味し、
結果として、全身で起こる病的な反応を抑えることに直結しています。

お口の健康を整えることは、全身の健康維持にとても大切なんですね。

ちょっと余談

ちなみに、
病的な「反応」を抑える、というのは、言い換えると、
病的な「老化」を抑える、ということです。

このことは「アンチエイジング」といいます。

「アンチエイジング」というと…、
綺麗なお肌とか、若返りのようなイメージでとらえられがちですが、
アンチエイジング医学というのは、「加齢」にフォーカスした予防医学です。
病気を予防し、さらに健康レベルを上げることを目指すものです。

病気を治す歯科治療、予防する予防歯科も好きですが、
病気にならないためや、健康レベルをさらに上げる予防医学は、
幸せな人生のための根本的な部分なような気がして、学ぶのがとても楽しいです。

一見つかみどころがなく、ともすると、怪しい分野に思われがちですが、れっきとしたサイエンスです。
今後も学習を続け、みなさんのお役に立てますよう、がんばります。

まとめ

今回の内容をまとめますと、

お口の健康を整えることは、全身の健康維持にとても大切。
言い換えると、
慢性炎症(むし歯・歯周病)をなくすことは、全身の健康維持に直結する。

 

次回、全身の健康と寿命のお話に続きます。
もう少しお付き合いください!

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院