折れた歯を抜いて、親知らずを移植。

先日、約2年前に当院で歯の移植を行った患者さんのメンテナンスを行いました。

歯の移植後も、欠かさずメンテナンスに通っていただいており、
移植した歯の調子もよく、順調に経過しています。

移植に至る理由から振り返ってみます。

 

当時、左下の奥歯が咬むと痛いということで見てみると、

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歯の側面と、二股の根の間の部分、合計2箇所に穴があき、
さらに、このレントゲンでは写りませんが、歯が真っ二つに割れていました。

穴やヒビの周りの歯は細菌感染しており、歯を支えている骨は炎症を起こしてしまっていした。

穴だけなら補修できることもありますが(パーフォレーションリペア)、
歯が2つに割れているのは治せないと判断し、抜歯をすることになりました。

 

歯を失った後に補う方法は、
一般的には

・入れ歯
・ブリッジ
・インプラント

とされることが多いですが、移植に適した歯があれば、
自分の歯で歯を復元できる「歯の移植」は、選択肢に入れたいものです。

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ちょうど以前から、反対側の親知らずがしみたり、歯ぐきが痛んでいたので、
その親知らずを移植することにしました。

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移植する親知らずに付いている歯根膜の位置と、抜いた穴の骨の位置を考慮して、移植する深さを設定します。

その後、移植した歯の神経の治療をして、被せ物をかぶせて治療を終了します。

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移植から9ヶ月後のレントゲンでは、歯の周りに骨ができているのがわかります。

移植後数ヶ月は歯を支える骨ができていないために、少し揺れていましたが、
1年10ヶ月後の今は、揺れも違和感もなく、問題なく使っていらっしゃいます。

移植当日と現在の、骨の状態を比べてみると、

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黄色矢印の部分に、歯を支える骨がしっかりできています。

歯を失っても、移植治療によって再び自分の歯で食事ができるのは、大きなメリットですね。

両側の歯を削るブリッジや、完全に人工物であるインプラント治療の前に、
一度考えたい治療法です。

 

歯の移植術は、生体の治癒力の素晴らしさを、特に実感する治療法です。
生体の持つ「治癒のルール」を守ってあげれば、生体の治癒力は最大限に発揮されます。

移植以外の治療も、
歯科治療は、生体の治癒力を最大限引き出すための下準備です。

治すのは、体。
治療は、そのための環境作りです。

移植や根管治療、むし歯治療はその最たるものです。

歯周病治療も、普段のセルフケアも、お口の中を清潔にして、
体の持つ本来の機能が働く環境を作るためにある、とも言えます。

 

また、体に治癒を成功してもらうためには、
治療は精密に、清潔に、行われる必要があります。

拡大診療や、ラバーダムは、そのためにあります。

 

日々の診療では、

・毎日のセルフケアの必要性
・定期的なメンテナンスの必要性
・精密な治療の必要性

を、たまにはこんな切り口でも説明しながら、診療にあたっています。


皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院