歯周病は塗り薬で治るの?

こんにちは。

歯ぐきが腫れてつらい歯周病。
早く治してスッキリしたいですね。

市販の歯周病用塗り薬で治るのでしょうか?

歯周病の原因と治療法について触れながら、塗り薬の効果についてお話したいと思います。

歯周病治療塗り薬

photo: Toothpaste / krisavilaphoto

塗り薬で歯周病は治るのか?




治りません。

 

正確に言うと、

一時的に症状が軽くなることは十分考えられますが、根本解決にはなりません。

では、塗り薬は何をしてくれているのでしょうか。
歯周病の原因をおさえながら、みていきましょう。

 

薬の種類と効果

歯周病の薬として、皆さんがドラッグストアでごらんになるものには2種類あるかと思います。

・傷んだ歯ぐきに直接塗るタイプ
・歯磨き粉タイプ

それぞれに色々な商品がありますが、商品効果のうたい文句はどれも基本的には同じです。

  1. 殺菌作用
  2. 消炎作用
  3. 引きしめ作用
  4. 組織修復作用

それぞれについて見ていきましょう。

 

殺菌作用

歯周病の原因は、根っこの表面に住み着いたバイ菌です。

薬がこのバイ菌に直接作用して、殺菌効果を出します!

ということなのでしょうが、

歯周病の原因:歯石

矢印の先の黒いのが、
バイ菌のすみかのマンション(歯石)。
薬はマンションの中には届きません。

 

歯周病を起こすバイ菌たちは、
歯ぐきの奥の根っこの表面についた、歯石というコンクリート製マンション?の中に住んでいます。
(左図矢印の黒い塊)

そのマンションはかなり丈夫で、薬で壊されたり、薬が染み込んでバイ菌が死ぬということは期待できません。

 

マンションから外出中のバイ菌くらいには、
効果があるかもしれませんが、量的にはごくごく一部です。

バイ菌のせいで歯ぐきは腫れています。

 

消炎作用

消炎作用のお話の前に、体の防御機能のお話をします。

体の反応
歯周病バイ菌

根に住み着いたバイ菌は、
毒素をまき散らします。

 

マンション内のバイ菌の存在は、体にとっては異常事態です。

生体外生物のバイ菌が勝手に住みついて、毒素をポイポイと周りに出します。
毒素はすぐ隣の歯ぐきにも振りかけられます。

 

そして、バイ菌は歯ぐきから体内に入ろうとしてきます。

 

 

 

体は、この状態を放置するわけにはにはいきません。

歯周病戦士

攻撃を受けた歯ぐきに戦闘部隊が到着。
バイ菌の侵入を食い止める戦いが始まります。

 

 

歯ぐきの中を巡回中のパトロール部隊は、その異常事態を察知し、戦闘部隊にマンション周辺に来るよう呼びかけます。
集まった戦闘部隊はバイ菌と戦って、体の奥にバイ菌が侵入するのを防ごうとします。

 

この戦いのことを「炎症」と言います。

 

 

もしも、炎症という体の防御反応が起こらなかったら、バイ菌の一人勝ち。
体内へのバイ菌の侵入を許してしまい、全身へ回って、最悪、命を落とします。

 

炎症が起こっているせいで苦しい、というような表現をしますが、
炎症反応は生命維持のためには必要な反応なのです。

炎症が起こるとなぜつらい?

では、炎症が起こると腫れたり、血が出たり、痛かったりするのはなぜでしょうか。

腫れ: 血流に乗って運ばれる戦闘部隊を現場に増やすために、血液の流れを多くして血管がパンパンに膨らむから。

痛い: 戦った戦闘部隊やバイ菌の死骸が現場に溜まって(うみ)、周りを圧迫するから。

 

頑張って戦ってくれてはいるんだけど、その代わり戦地は荒れちゃう、という感じでしょうか。

歯周病骨吸収

炎症が歯ぐきの奥の骨に起こると、自ら骨を溶かして、バイ菌から遠ざかろうとします。

 

そして、炎症が歯ぐきの奥で起こると、
つまり歯周病が進行して、炎症の現場が歯ぐきの奥=骨の近くになると、骨が溶けます。

正確に言うと、骨溶かし部隊が自ら骨を溶かします。
バイ菌が溶かしているのではなく、体が自ら判断して骨を溶かしています。

これは、バイ菌からの安全な距離を確保するために、自ら溶かして遠ざかろうとしていると考えられています。
実際にはその距離は約2.5mmに保たれているという報告もあります1,2

 

 

ちなみに、私たちの体では、いつもどこかで炎症が起こっています。
そのようにして健康が維持されているのですね。凄いことです。

  1. Schroeder HE : Discussion : pathogenesis of periodontitis. J Clin Periodontol, 13 : 426, 1986.
  2. Page RC and  Schroeder HE : periodontitis in man and other animals. A comparative review, Basel : Kargar S, 1982.
炎症を消す作用?

さて、薬の消炎作用というのはどういうことでしょうか。

体が起こしてくれた炎症の程度を抑えて、炎症時に感じる腫れ、出血、痛みを緩和しましょう、という作用です。

つまり、究極の対症療法です。

 

原因であるマンションの中のバイ菌には全くアプローチしていません。

バイ菌が存在する以上、仮に炎症を抑えても、その後も体は反応し続けますから、
根本解決=原因除去にはなりません。

 

ただ、痛みや苦痛は減る可能性はありますので、
とりあえず痛みをなんとか減らしたい、という目的なら効果はあると考えられます。

 

引きしめ作用

炎症の起こって腫れた組織を引き締めることで、血液の流れを抑えたり、それにより痛みを感じにくくすることを期待しています。

原因はバイ菌ですから、先ほどと同じで対症療法の意味が強いです。

 

組織修復作用

全ての薬に入っているものではないですが、代表的な塗り薬に入っているのでご紹介。

バイ菌の存在により、体が起こしてくれた炎症。
その結果、組織は荒れます。

組織修復作用は、その荒れた組織の治りを促進する作用です。

 

薬の効果まとめ

以上をまとめますと、

1.殺菌作用
 丈夫なマンションを残したまま、上から薬を塗っても中のバイ菌には届かない。
 表面のバイ菌や、浮遊しているバイ菌には効果があると考えられる。

2.消炎作用
3.引きしめ作用
4.組織修復作用
 マンションとバイ菌が存在するままに、その結果傷んだ歯ぐきを治そうとしても、
 攻撃の勢力は衰えないため、一進一退?
 アクセルとブレーキを同時に踏む感じでしょうか。
 ただし、一時的に歯ぐきが楽になることはある。

 

塗り薬や歯磨き粉では、歯周病を治すことはできません。

一時的な症状の緩和にななるかもしれませんが、再発の可能性はかなり高いと考えられます。

再発を繰り返すうちに、体はどんどん破壊され、取り返しのつかないことになりますので、
あやしいかなと思ったら、やはり早めの受診をおすすめします。

 

薬で治る(ように感じる)ケース

たまに、
「歯周病用の歯磨き粉で磨いたら症状が治まって、それ以来安定している」という患者様がいらっしゃいます。

歯磨き粉の薬理成分が効いたのではなく、
歯磨き粉を使うために、歯磨きの頻度や時間が長くなって、
結果的にバイ菌がよく取れたことで、良くなったと考えられます。

しかし、これは歯周病の軽度の場合、つまり、
歯ぐきの奥の歯石がないか、あっても軽度の付着の場合に限ったことだと考えられます。

やはり、バイ菌を取ること自体に意味があります。

 

歯周病に必要な治療

では、歯周病を治し、再発を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

ここまで読んでいただければ、おわかりかと思います。

 

バイ菌を取り除けばいいだけです。
そして、その状態を維持すれば基本的には再発しません。

 

歯周病の発症メカニズムはとても単純です。
そして、その治療も基本的には単純です。

 

具体的には、

  • セルフケア: 毎日のお掃除で汚れを取る(その方法をマスターする)
  • プロフェッショナルケア: こびり付いてしまった汚れや難しい場所は、歯科医院で器具を使って取る
  • メインテナンス: 自分で取りきれない汚れは定期的にメインテナンスで取る。(二人三脚で取り組む)

基本的にはこの3つで歯周病治療を行います。

 

歯周病は、症状を感じにくいためにはっきりイメージがわかず、つかみどころがない感じがするかもしれません。

おすすめは、

まずは、歯周病検査で自分の状態を知ること。

そこから始まります。

そして、自分にとって必要な治療法を、明確に把握すること。

 

初めて当院を受診する方に、過去の歯周病検査の経験を伺うと、初めてという方が半数以上。

悲しい現実です。
歯周病とむし歯は、お口の中の2大疾患と言われ続けている基本的な病気。
その検査を受けることができなかったそれまでの歯科受診。

 

成人の約80%が歯周病にかかっていると言われています。
しかも、気づかないうちに進行する病気です。

 

後悔しないために、一度ご自身の状態を把握なさることを、おすすめします。

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院