大切な歯を救うために!根の治療(歯内療法)の重要ポイント[前編]

こんにちは。

今回から2回で、根の治療の大切な考え方と、治療の流れについてのお話です。

多くの方が経験している根の治療。
そして、再発率が高く、治療期間も長くなりがち。
治療途中で中断してしまうこともあるようです。

根の治療で抑えておきたい大切なお話です。

左下根の治療

写真は、他院で治療中の歯の治療相談で、当院を受診なさった患者さまのお口です。

初診時の状態

・左下前から4番目の歯の、痛みや違和感が消えない。
・左下の歯ぐきを押すと違和感を感じる。
・かかりつけの歯医者さんに約2ヶ月間、週に1回通い続けている。
・治療は毎回2−3分くらいで終わる。

ということでした。

2分くらいの治療を約8回受けていて、治ることができなかったのですね。
ちょうどこんな記事(早い治療はいい治療?)を書いたところでしたね…。

何が起こっている?

この歯は、むし歯が原因で歯の中に細菌が侵入し、問題を起こしていると考えられます。

細菌侵入

むし歯から入った細菌は、歯の奥へと進みます。
そして、ついには根の外へ。

細菌が、歯の中を奥に進み

根の先端の穴から、根の外に出て

歯ぐきに入り

歯ぐきに控えている免疫部隊(白血球)と衝突

細菌 VS 免疫部隊の戦い(炎症反応)が起きる

炎症反応が、腫れや痛みを感じさせる

ということが起こっています。

原因:歯の中の細菌
痛い場所:歯ぐき

というわけです。

 

治療の目的

歯科治療の基本は、

1.炎症のコントロール
2.力のコントロール

です。

今回は、1.炎症のコントロール、つまり、
炎症の原因である歯の中の感染源(細菌)の除去を行うことが、治療の目的です。

治療によって、根の中をクリーニングし、また、将来再感染しないようにします。

現状のままで治療を進める問題点

初診時

初診時の写真。 左から、頬側、裏側、噛み合わせ側です。 かぶせ物は外したままでした。

今回の根の治療は、かぶせ物を外し、むし歯を削ってから行われています。
ここまでの2ヶ月間、外して削って小さくなった歯のままで、治療を続けていました。

 

このように小さくなった歯のままで治療を行うと、
治療中に細菌を含んだ唾液が、低くなった歯の壁を越えて歯の中に入ってしまい、

治療中に唾液からの細菌感染が起こる可能性があります。

細菌を減らすための治療をしているのに、逆に治療中に細菌を増やしてしまうというわけです。

治療中の細菌感染は、根の病気の再発率が高い理由のうちの一つです。

治療中の仮歯

右写真黄色矢印についてです。

歯が小さくなったままで2ヶ月経過したために、
矢印の歯ぐきは、歯に覆いかぶさってしまい、本来の形を崩しています。

一つのことを改善するために、別の問題を引き起こすのは、あまり良くありませんね。

 

根の治療には直接関係ないですが、間接的には大きな影響力を持っています。

根の治療の予後を左右するのは、
・根の治療の精度
・その後の被せ物の精度

の2つと言われています。

 

今回の場合、根の治療の後には、被せ物を被せます。

しかし、このように歯ぐきの健康が保てていない状態のままだと、理想の型取りができず、
満足のいく精度の被せ物を作るのがとても難しくなります。

もしも仮に精度の不備があると、そこから再び細菌感染を起こし、
数年後にまた今回と同じ状態に戻ってしまいます。

 

最終的に高い精度の被せ物を入れるためには、型取りの前に歯ぐきの健康を作る必要があります。

治療期間中に仮歯をぴったりの精度でいれておくことで、健康な歯ぐきを作ることができます。

この歯ぐきの経過については、次の写真で説明します。

 

根の治療のポイント4つ

根の治療において、大切なポイントは2つ。

1.清潔な環境を作り、治療中の細菌感染を防ぐ。
2.根の中の細菌を確実にかつ、最小限の削る量で除去する。

そして、

1.のために
・隔壁(かくへき)
・ラバーダムの使用

2.のために
ルーペやマイクロスコープなど拡大システム下での治療
・超音波治療装置の使用

の4つが必要です。

今回は、1.細菌感染対策の、隔壁とラバーダムについてご紹介します。

隔壁(かくへき)

歯の壁

低かった歯の壁を、樹脂で高くします。

隔壁

歯の壁を作る処置を、「隔壁(かくへき)」と言います。

むし歯治療用の樹脂を歯に接着し、壁を高くします。

隔壁により、根の中に唾液などが流れこみにくくなり、根の中を清潔な環境に保つことができます。

この処置は5−15分くらいで完了します。

右写真矢印の歯ぐき

写真には写っていないのですが、隔壁製作と同時に仮歯をつけました。
その結果、矢印の歯ぐきは健康になり、先ほどの写真と比べると、本来のくっきりとした形をしています。

残っている歯の輪郭もはっきり出ていて、これなら被せ物を作る時にいい型取りができ、
結果的に、歯全体が長持ちします。
(歯ぐきがくっきりした形をしていてビシッとしていると、嬉しくなります。笑)

(長持ちの話については、『「被せ物が長持ちする」ってどういうこと?』も併せてご覧ください。)

 

 

今回は、
・根の病気の基本
・隔壁と、仮歯と歯ぐきの関係
のお話でした。

お疲れ様でした。

次回はこの次の処置、ラバーダムと根の治療の意味についてお話します。

 

お口にストレスのない、健康で楽しい時間が過ごせますように

藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁