できるだけ歯を削らないむし歯治療(トンネル法)

こんにちは。

今日は、日々の診療でよく行う、むし歯治療をご紹介します。

とても地味で細かいので、患者さまにはわかりにくいことかもしれませんが、
歯をできるだけ削らないむし歯治療の方法です。

歯の間のむし歯

パノラマ

奥歯の歯と歯の間に、むし歯があります。

 

むし歯は歯と歯の間にあるので、見た目にはわかりません。

むし歯は歯と歯の間にあるので、見た目にはわかりません。

ぱっと見は、わかりませんね。

別のレントゲンで見てみると

デンタル

歯と歯の間は黒く写っていて、むし歯によって歯が柔らかい事が予測されます。

お口の中では、
術前

溝が過去に詰めてあり、二次むし歯で黒く見えますが、
中のむし歯は見えていません。

歯の中には、こんな感じでむし歯があります。

コンタクトカリエス

歯が溶けて、これくらいの空洞があると予測されます。

原因は、

  • 歯の間のケア不足により、むし歯菌に感染した。
  • 歯ぎしりなどの過剰な力によって歯の間の歯にヒビが入り、
    そこにケア不足により、むし歯菌が感染した。

のどちらかと考えられます。

歯の間の治療法

このようなむし歯の治療は、最も普及している一般的な方法だと、
インレー

歯と歯の間の部分を削って、金属になっています。

これは、中にあるむし歯を削るために、表面の健康な歯を削っているためです。
しかし、できれば表面の健康な歯は、削らずに治したいです。

見た目に悪いばかりでなく、歯へのダメージが大きいです。
そして、この金属は歯ぐきにも触れています。
歯ぐきにとってもベストとは言えません。

状態によってはこの方法ももちろん行いますが、
避けることができるのならば、他の方法を選択したいところです。

トンネル法

そこで、今回のケースは、「トンネル法」を用いて治療しました。

まず、溝にすでに詰めてあった、黒くなった古い詰め物を外します。
IMG_3340

同じ状態ですが、角度を変えてみると、中のむし歯がうっすら見えています。
IMG_3341

さらにそのむし歯に向かって、よく見ながら掘り下げていきます。

↓おおかた、むし歯をくり抜いた状態です。
IMG_3342

歯の側面(隣の歯と接する面)には、むし歯の入り口の穴があります。
この写真では、下方向に、隣の歯と接した窓状にあいた穴があります。

側面にあるむし歯の入り口を、歯の表面に開けた穴から器具を入れて、
過不足なく削り、形を整えます。

①:側面にあるむし歯の入り口 ②:治療のために削るトンネルの入り口 黄色:むし歯になっていない健康な歯 矢印:②の穴を開け、中のむし歯を取り、①の入り口まで削り進める。

①:側面にあるむし歯の入り口
②:治療のために削るトンネルの入り口
黄色:むし歯になっていない健康な歯
矢印:②の穴を開け、中のむし歯を取り、①の入り口まで削り進める。

歯の側面にある入り口の穴(①)は、とても小さいので、少しづつ少しづつ削る必要があります。

 

そのためには、回転式のドリルではなく、超音波式の器具を用いて進めます。
超音波式の器具は、振動によって、狙ったところだけをほんのわずか(0.2mmくらい?)だけ、少しづつ削る事ができます。

削るというよりは、振動で歯をこするくらいの感じです。
拡大ルーペを用いて拡大視野下で、鏡でいろいろな角度から見ながら、少しづつ進めます。

裸眼では同じ細かさではできない内容です。
IMG_3347

 

側面にあったむし歯の入り口を整えました。
IMG_3350

 

この後、白い詰め物の接着のための様々な処置をして、詰め終わったのがこちら。
IMG_3354

むし歯になっていない歯を削る事なく、治療を終える事ができました。

もしも将来、今回残した歯が欠けたりしても、部分的に補修できればその方法をとり、
それができない時に初めて、従来からの歯を削る方法をとる予定です。

治療後の大切なこと

このあとは、むし歯が再発しないように、フロスを用いたセルフケアとメンテナンスで、
維持していきます。

今は、下のグラフの、オレンジが終わったところです。
今後は、緑の健康維持ステージに進みます。

赤の流れに行ってはいけません!

メインテナンスグラフ

こちらの患者さまは、一緒に練習したフロスを、とても頑張っていらっしゃいます。
診療が始まるときには、

「今日汚れが取れているか見て、教えてください。」

と、ご自身の普段のセルフケアをさらに改善したいとお考えでした。
その一生懸命なお気持ちを、最大限サポートしたいと思います。

治療方法の選択

「トンネル法」は、適応症をしっかりと選択すれば、歯を守る事のできる方法です。

しかし、すべての症例に行える万能な方法ではありません。
中のむし歯が大きいために残す歯が薄くなったり、
その部分が噛み合わせの歯と強く接触していれば、選択しません。

 

治療法は、むし歯の大きさ、噛み合わせ、その方のプラークコントロールレベル、年齢など、
様々な要素を複合的に考え、一番良い方法を選択、提案しています。

 

治療法について考える時に、いつも一番大切にしているのは、

将来、患者さまが歯を失う事なく、人生の質を高く保つ事ができること

 

そのために、お口全体に起こる将来の変化、リスクを予測して、
そうならないための一番理想の方法を考えます。

その時に治るだけではなく、生涯安定して自分の歯で過ごせる事が必要ですね。


一つの歯の小さなむし歯を治療するのにも、
一つ一つのステップを確実に行うことが、その治療の最終的な成功に結びつき、
そしてそれらの積み重ねが、将来のお口全体の安定につながります。

これからも、コツコツと積み上げていきます。

 

明日、日曜日は勉強会@東京です。

明日のセミナー講師は、13年前からお世話になっている先生です。
お話を聴くことはもちろんとても楽しみですが、同じ志の先生方との新たな出会いもとても楽しみです。

 

良い週末を!

 

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、残す」藤井歯科医院