神経を取らなければいけないと言われた、大きなむし歯。
かかりつけの歯医者さんで、
「むし歯が深いから神経を取らなければいけない」と言われたけど、
何とかそれは避けたくて、HPとブログをご覧になり、遠方から受診していただいた患者さん。
上の奥歯の、歯と歯の間にできたむし歯です。
お話を伺うと、以前、隣の歯の神経を取ったことがショックで、
次にむし歯ができたら、それは避けたいとお考えになった、ということでした。
患者さんがおっしゃるように神経を取るのは、できれば避けたいものです。
もちろん、取ったほうがいい場合もありますので、一概には言えませんが、
残せるものなら、残す選択を取りたいものです。
神経を取ると、その後数十年のお口の健康に関わることもあります。
今回は、特に自覚症状はなく、
レントゲンでも、むし歯により神経が強く炎症を起こしている様子はなかったので、
仮に神経まで届いていたとしても、神経を残せる可能性があることを事前にお話ししました。
続いて、実際のむし歯の大きさによる複数の治療方法、それぞれの予後について説明します。
各治療方法については、治療中はお話できないので、治療前によくご理解、納得いただいた上で、
最終的に患者さんが決定し、治療スタートです。
治療前の写真です。
写真左から2本目の歯です。
ほっぺ側からは、むし歯であることはわかりません。
裏側から見ると、
銀歯と接している部分にむし歯があり、白く見えます。
むし歯を取ると神経まで届いている可能性がありますので、
細菌の存在する唾液や血液と隔離するために、ラバーダムをします。
神経の領域は体内、細菌は外の世界です。
両者が混ざってしまっては治るはずのものも治りません。
歯の周りをクリーニングしてから、ラバーダムをします。
これで、外の世界と治療領域が隔離されました。
専門的な話ですが、治す歯の歯ぐきとの境目は、ラバーをデンタルフロスで縛って、
歯ぐきからの唾液や血液を完全にシャットアウトします。
(歯の上に白く見えているのが縛ったフロスの端です。)
むし歯を削ってみると、
中はむし歯で柔らかくなっていました。
むし歯を取っていきます。
中で広がるように進行しています。
表面のエナメル質はできるだけ残して、中を削ります。
エナメル質をできるだけ残すことは、予後に関わるとても大事なことです。
また、この後に、歯の形を復元する方法にも大きく影響します。
(小さな白い詰め物 or 大きく削る銀歯)
このような処置は、拡大視野でないと精密、正確に行えないことの代表格です。
いつもこのブログで、強拡大ルーペや、マイクロスコープによる治療を受けることを、
強くお勧めしている理由です。
残っているむし歯を、「う蝕検知液」で調べます。
洗い流すと、
むし歯の部分だけが青く染まっています。
むし歯を見えるようにして、取り残しを防ぐ大切なステップです。
青くなったところだけを慎重に削っていくと、
穴は大きくなってきました。
もう一度、う蝕検知液で染めます。
染めて、洗い流して、染まった部分を削ると、
神経まで届いていました。
奥の方で赤く見えるのは、血管からの出血です。
この後、むし歯によって炎症を起こしている神経を清潔なドリルで優しくカットし、
よく洗浄、消毒します。
次に、神経まで空いた穴の中に、カットした神経に接するように傷口用の材料を敷きます。
その後、外から細菌が入らないように、別の材料でしっかり封鎖して、
この日は終了です。
一週間後に、治療後の症状を伺うと、その後、まったく症状はなかったとのことでしたので、
歯の形を復元するステップに移ります。
今回は、白い詰め物で1回で歯の形を治す、レジン充填を行いました。
(今回、色が白すぎましたが、患者様には説明し、これでOKと了承いただきました。)
今回のレジン充填は、できるだけ歯を削らないで、最大限歯を残すことができる方法です。
前のステップでむし歯を取るときに、エナメル質をできるだけ残して削ったから行えることでもあります。
一般的には、今も昔も、隣の銀歯のように大きく削って形をとり、
出来上がったものをくっつける方法が主流です。
色が悪いだけでなく、余分に歯を削りますので、
大切な歯の一生を守るためには、できれば避けたい方法だと考えています。
今回のむし歯は、
「むし歯が深く、神経まで届いているから神経を取らなければいけない。」と、言われたむし歯でしたが、
実際に神経まで届いていても、適切な処置を行えば、症状が出ることもなく神経を残すことができました。
神経を残すというと、使う材料などがフォーカスされがちですが、
その前に、もっと大切なことは、
- 治療前のクリーニングやラバーダムによる、清潔な環境作り。
- 強拡大視野による、確実なむし歯除去、最小限の削り方、精密な処置。
といった基本的なことです。
この2つによって、多くのむし歯治療の結果は、大きく左右されます。
どんな素晴らしい材料を使っても、不潔な環境で、むし歯を取り残して治療を行えば、
残せる神経も残せないのは明らかです。
基本は大事です。
しかし、その基本の不確実さによって、
得られるはずのいい結果が、得られていないことが多いのも事実です。
基本をしっかり守っているかは、患者さんにはなかなか見えないこともあります。
わからなければ、担当の先生に聞いてみるのも、
ご自分の体を大切にしてあげるためには、必要なことかと思います。
涼しくなってきましたので、風邪に気をつけましょう!
では、今日もお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院