神経まで届いたむし歯、神経を残して治す。

こんにちは。
今日は、神経まで届いていたむし歯の治療のお話です。

 

下の奥歯が痛くて来院した患者さん。

詰め物の治療を受けた跡があります。

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でも、仮の治療?って思うくらいのボテッとした詰め物が見えます。

大きくしてみると、

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緑色が奥側の歯に付けてある詰め物で、青色が手前の歯に付けてある詰め物です。

 

むし歯治療って、

むし歯をとって、神経を保護し、最後は本来の形態に復元して、
機能と見た目を回復するものじゃなかったっけ?

と、改めて心の中で確認してしまいました。

義理の歯=義歯な訳だから、本来の形にできるだけ近づけるものですよね。。。

 

とてもお忙しい中で治療をしていただいた?何か理由があった?
いかなる理由があれど、もう少し歯っぽく形を作れなかったのかな…。

 

白い詰め物(コンポジットレジン修復)の治療成績は、主に

  • 押さえるべき正しいやり方を行うかどうか。(ちゃんとやると時間がかかります)
  • 歯科医師個人の技術力の差。

に左右されると思うのですが、技術力の差は誰にでもあれど、
少なくとも、歯の形は復元して欲しいと思いますよね。

そして、それは、患者さんにとっては当たり前のことですよね?
これが、手の平とか、患者さんが自分で見ることのできる場所だったら、
こうはならないですよね。

 

患者さんからするとちゃんと治療されていることは、当たり前のことだと思いますが、
私たちが日々治療する内容は、実は、過去の治療のやり直しが、結構な割合を占めています。

もちろん、私がそのようなことをゼロに出来ているとも言い切れません。
しかし、医療として、正しい医療を行なうように努力するのが、
我々歯科医師の最低限果たす仕事だと思います。

 

正しい医療によって、少なくとも、最低限の医療レベルを保たないといけません。

ただ、これまた患者さんからすると、「え?!」と思うかもしれませんが、
最低限のレベルを保てている治療の跡も、実は意外と少ないです。

でも、そのマイナス面は、数年経ってから痛みや不快感として現れるので、
患者さんにとっては、まさか当時の治療の連続する経過だとは思いませんよね。

 

じゃぁ、その最低限のレベルを保つためにどんなことが必要なのかというと、
知識、熱意、技術、センス、倫理観など、いくつも考えられますが、
大きく差が出やすく、なおかつ、患者さんにもその見極めがつきやすいのが、

強拡大視野と十分な光量のもとで、よく見える治療をしていること。
今日拡大のルーペや、マイクロスコープによる診査、治療、予防処置のことです。

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拡大して見る世界は、裸眼とは別次元です。

見えていなければ、手が出ません。
裸眼で治療するのは、見えるのに限界があります。

というか、細かいところまで見えません。
でも、その「細かいところ」が、歯科治療にはめちゃくちゃ大事なんです。

拡大と光のことについては、
【銀歯の下のこのむし歯、いつからあった?】の真ん中辺りや、
【もう裸眼には戻れない。8倍拡大治療で見る世界】でも書いていますので、ご覧ください。

 

さて、話を戻して、この歯のレントゲンです。

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右側のレントゲンで解説します。

先ほどの写真に写っていた青と緑で書いた詰め物が写っています。

緑で書いた詰め物の下には、神経まで及ぶむし歯が確認できます。

 

青で書いた詰め物の下には、むし歯か空洞を疑うような、黒く抜けた写りがあります。(?の部分)

詰め物を外してわかりましたが、これは何も詰まっていない空洞でした。

そんなこと起こるの?って思うかもしれませんが、これも、先ほどの正しい医療の話と同じです。
短い治療時間で、かつ、見えない状態で治療すると、こういうことは起こりやすくなるのかもしれません。

幸い、この空間には大きな細菌感染はなかったので、少し削って綺麗にしてから詰めて治すことができました。

 

そして、今回の痛みの原因になっていた、右側の歯のむし歯を取りきると、

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むし歯が神経まで届いてしまっていました。

この大きさで神経が露出してしまうと、教科書的には、
「神経を取りましょう」と書いてあります。

でも、まだ神経を取る必要はありません。
神経は、むし歯に近い一部分だけ被害を受けているだけで、
まだまだ治ろうと一生懸命頑張ってくれています。

 

強拡大でよく見える状態で、神経に与えるダメージを最小限にできるように、
丁寧に優しくむし歯を完全に取り除き、
むし歯菌と戦って傷んでしまった神経組織はカットします。

神経の傷口を洗浄・消毒したら、
露出した神経の表面に、歯に似た硬い組織を作ってくれるお薬(今回は水酸化カルシウム製剤)を置き、その上にぴったり外と遮断する材料で蓋をして、その日は終了です。

 

1週間後に症状を確認すると、少ししみる感じがするとのこと。
痛みの程度や種類から、治癒経過中の症状と判断し、最終の詰め物の処置を行いました。

その後痛みは無くなり、順調に経過しました。

 

それから8ヶ月後、メンテナンス時にレントゲンを撮って歯の中の変化を確認します。

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神経に接する様に、当時入れた水酸化カルシウム製剤が写っています。
レントゲンでは問題なく、神経は生きてくれている様に見えます。

さらに確認のために、
電気歯髄診断(歯に微量の電流を流して感覚の有無で、神経が生きてるかを判断する検査)
を行うと、正常に生きている反応あり。

 

むし歯自体は深く、神経にダメージは出ていましたが、
適切な診断と処置により、神経を残すことができました。

神経を取るか残すかで、この患者さんの40年後の食生活が変わっているかもしれません。
神経を残すことができて、本当に良かったです。

 

「むし歯が深く、神経まで到達している=神経を取る必要がある。」
とは限りません。

治療前の痛みが一過性だったり、少ししみるくらいだったら、
レントゲンで神経まで到達してしまっていても、適切な診断と処置によって、
神経を残して生涯健康な歯を保てる可能性はあります。

 

歯科医師の知識、診査・診断、治療法、技術で、歯の一生は大きく左右されます。

後から後悔しても二度と戻ってこないことの多い、お口の健康。
歯医者さん選びは大切にしたいものです。


敬老の日で連休ですね。
子供達と遊ぶのが、楽しみです。
どこかで自分のトレーニングの時間もとれるといいのですが…。

皆様も、素敵な連休を!

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院