もう裸眼には戻れない。8倍拡大治療で見る世界。
こんにちは。
今日は私の診療の必需品、
8倍拡大ルーペとLEDライトのお話です。
拡大すると、どんな世界が見えるのでしょうか。
裸眼の治療に戻れないわけとは?
上の写真は私が実際に診療で使っている、
8倍拡大のルーペと、LEDライトです。
(外側の大きな筒状のがルーペ、真ん中の小さなのがLEDライト)
私のルーペは、アメリカ・サージテル社のもので、
他にも、カールツァイス社製のルーペなど、様々なブランドのものがあります。
私は学生時代に、2.5倍のサージテルを使い始めました。
その後、3倍に倍率を上げ、今はこの8倍。5年ほど前から使っています。
診査から、一般治療、入れ歯の治療、オペ、お子様の治療、クリーニングなど、
全ての治療に使っています。
歯科治療は細かさが必要ですから、当たり前のことかもしれません。
患者さまからすると、
「歯医者なんだからよく見えた方がいいんだろうし、実際、よく見えて治療してるんでしょ?」
と思っていらっしゃるかもしれませんが・・・、
ルーペを使うか使わないかの差は、想像以上かもしれません。
どれくらい違うのでしょうか。
百聞は一見に如かず。
早速、裸眼と8倍拡大の世界の差を見てみましょう。
写真は、奥歯のむし歯治療中の写真です。
(※今回の写真は、裸眼と8倍拡大の相対的な比較として表現しています。
明るさ、大きさともに、厳密に実際のものを再現しているわけではありません。)
[拡大なし裸眼 + 診療台のライト]
大体こんな感じに見えます。
予想より暗いでしょうか?
歯は見えていますし、そこに削る器具を当てれば、歯は削れますが、
どこにむし歯があるのか
どれくらい削ればいいのか
むし歯が陰に隠れていないか
判断が難しいですね。
判断できるようにするためには、もっと大きな穴にしないと厳しそうです。
歯を残したくても、もっと奥を見るためには、
入り口の穴をさらに広く削らないと、中が確認できません。
そして、奥行き感が掴みにくいですね。
手の感覚で、奥行きを把握するしかなさそうです。
見えていれば視覚情報からも、奥行きがわかるのですが。
[8倍拡大+LEDライト]
裸眼とは全然違いますね。
境界、奥行きはもちろん、
硬さ、柔らかさの質感までわかります。
入り口の健康な歯を残すために、小さな穴だけを開けて、なおかつ、中は最小限の削り方で削れます。
また、むし歯を取った後に詰めるプラスチックが長持ちするように、削った境界線の形をきれいに仕上げることもできます。
そして、見えていれば、一方向からだけではなく、
下の写真のように鏡で色々な角度から覗いて、裏側も見ながら削ることができます。
そうすることで、削る必要のない歯は残し、
取り除くべきむし歯はしっかり取り除くことができるのです。
この当たり前のような歯の守り方は、
実は「よく見えている」からこそ、できることなのです。
裸眼で、高倍率拡大+ライトと同じことをするのは、ほぼ不可能です。
では、このケースの場合は、裸眼の治療ではどうするのでしょうか。
裸眼では、仮に、同じように小さな穴を開けることができたとしても、
その裏側を見ることはおそらくできません。
(一部分だけ見えるかもしれませんが、完全に確認するのはほぼ無理)
ですので、取り残しを避けるために、写真では残してある表面の細い部分を削り、
裸眼でもよく見えるように外開きの大きな穴にするのが一般的でしょうか。
(先生によって違いますので、一概には言えませんが…)
今回のケースでは、削る大きさ、むし歯の取り残しについて、主に取り上げましたが、
実際には、マイクロクラック(細かいヒビ)の発見や、
この後に続く詰める処置、形を整える処置etc…と、すべてのステップについて、
見えることはメリットになります。
そして、仕上がりの精度が高く、綺麗なので、長持ちします。
「長持ち」はとても大事なことです。
むし歯治療だけでなく、
診査から始まり、
歯周病治療
根の治療
噛み合わせの調整、確認
クリーニング
などなど、
すべての治療において、精密な治療をするならなくてはならないものです。
そして、これは患者さまには直接関係ない話ですが、
よく見えることは、私に精神的な安心や楽さも与えてくれます。
見えていることで、判断に迷いがなくなるので、自信を持って次のステップに移れます。
また、迷っている時間がないということは、各ステップの判断のスピードも速くなります。
サージテルの紹介動画です。
約6分と長いですが、歯を守るため大切な内容が含まれています。
なお、当院では、歯科衛生士も拡大ルーペを使って診療しています。
ルーペに関しては、
全ての診療で、高倍率を使う、ということにとても大きな意味があります。
最後に、高倍率拡大ルーペを使った診療のメリットをまとめておきます。
- 診査の時に、問題を見逃さない
- 歯を削る量を最小限にできる
- 詰め物との適合などをよく見て確認しながら処置できるので、高精度、綺麗→長持ちする
- 根の治療において、裸眼では見えない根管や、複雑な形などの問題を発見できる
- クリーニングで、歯石などの取り残しをなくせる
- よく見えるため、判断が速くなり、治療スピードが上がる
どれも結局は、高精度、長持ち、につながります。
私は、裸眼の治療には戻ることができません。
マイクロスコープを用いた治療は…、もう少しお待ちくださいませ…。
せっかく大切な時間を使って通院するなら、
高精度で長持ちする治療を受けて、再治療を減らしましょう。
そして、お口のトラブルの対応に追われる時間をなくし、
人生の大切な時間を、健康なお体で楽しんでいただきたいと思います。
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁