早い治療はいい治療?
こんにちは。
今日は、歯科治療にかかる時間についてのお話です。
患者さまにとっては、治療時間は短いほうが絶対に楽ですよね。
でも、短いほど良いのかというと、そうでもなさそうですね。
適正な時間というものがあるのでしょうか?
つまらないお話かもしれませんが、
短時間の治療を受けてきた患者さまの中には、その後お困りの方が多い気がしますので、
参考にしていただけたら幸いです。
患者さまに本当に受けていただきたい歯科治療とは、どんなものなのでしょうか。
photo: 12 sec / pbalcer
診療に必要な内容と時間
体に優しく丁寧な治療で、
かつ、
長持ちするためには、
・必要な治療ステップを十分に踏み
・その処置一つ一つを正確、精密に
行う必要があります。
そのための治療時間は、私は最低30分必要だと思います。
(あくまで、私の基準です。先生によって違うと思われます。)
さらにこの時間内で、お話したいこともたくさんあります。
むしろ、「説明と患者さまによる選択」がないことには、次に進むことはできませんので、
話し合いの時間は、最も大切な時間です。
治療前の説明に7分、治療後の説明に3分使っただけで、治療に使える時間は最大20分です。
20分でも、もうギリギリです。
ですので、ときには、説明のためだけにご来院いただくこともあります。
「説明」につきましては、過去の記事インフォームド・コンセントからインフォームド・チョイスへをご覧ください。
短時間で治療できるの?
10−20分くらいの治療で、安心の治療内容が受けられれば、患者さまにとっては一番いいですよね。
ずっと寝たままで口を開け続けるのは、やはり辛いです。
しかし、残念ながら、長持ちする安心の治療のためには、最低30分、時には2時間の予約をお願いすることもあります。
(もちろん患者さまと相談の上です。)
なぜなら、短時間の治療では、やれることに限界があるからです。
短時間で行うには、必要なステップを飛ばすしかありません。
結果的に、治療で得られる得点は下がることになります。
対症療法メインの内容でしたら短時間でもできるかもしれません。
根本解決に結びつくような、原因除去療法のためには、そのための生活習慣の説明を含め、短時間では厳しいのではないでしょうか。
超絶スーパーテクニックのドクターは、15分の治療で1時間の内容をこなすことができるのかもしれません。
今の所、私はそのような先生のお話を伺ったことはありません。
早いとうまい?
たまに、「早いからうまい」という会話を耳にすることがあります。
うまいから早い
はあると思います。
それは、最高だと思います。
目指したい領域です。
うまいと判断に迷いがなく、動きには無駄がありません。
本当にうまくてかつ、センスのある先生は、早いです。
大学の1学年は100〜140人位ですが、学生時代からその素質を持っている先生は、
その中でも、多く見積もって10人位だと思います。
また、うまいには2種類あると思います。
最上級:うまくて早い
2番目:うまいが早くはない
うまいのは、技術が必要な職業である以上、大切なポイントです。
それが早くできれば、患者さまにとっては最大のメリットなので、早いに越したことはないと思います。
しかし、
早いからうまい
はどうでしょうか。
基本的で大切なこととして、
歯科治療は、丁寧に精密にやればやるほど、時間がかかるものです。
先ほどのお話は、その上での早さのことです。
「あの先生は腕がいいから、早く処置を終わらせることができる。」と判断するのは、
慎重になった方がいいのかもしれません。
短時間で終える治療の結果
治療の成績には、
・短期間で見えること
・長期間経ってから現れてくること(2、3年以降)
があります。
短時間の治療のあと、すぐに問題が起こらなくても、長期間経ってから現れることも考えられます。
患者さまにとっては、まさか治療当時の影響だとは考えにくいのではないでしょうか。
そして、長期間経ってから現れる問題は、他の歯に起こることもあります。
短時間で行われたり、部分的な治療では、長期間に渡るお口全体の安定は作りにくい。
というのが、歯科医療においての一般的な見解です。
「悪くなったら予約なしですぐ治してくれて、治療も短時間。いつ悪くなっても、すぐ終わるからいい。」
という場合、一度よく考えてみてみてください。
その繰り返しの結果は・・・、
歯を失うということかもしれません。
そして、その時に聞こえてくる会話は、
「いつもすぐに治してくれたんだけど、歳だししょうがなかったんだよね」
本当にしょうがないことでしょうか?
過去に行ってきたことの結果が、しかるべきタイミングで表面化してきた、
ということはないでしょうか?
高い治療成績のために
・正確で精密な処置
と
・将来を見据えた総合的な視点と治療計画(時間の流れととも起こりうる、全体と部分の変化)
が必要です。
ということで、患者さまにとっては辛いかもしれませんが、
大切なお口のためには、ある程度の治療時間は必要だと思います。
ここで、私は短時間でできます!どうぞご来院ください!
と言えたらいいのですが、それはできないことなのです。
これからも、無駄がなく患者さまにとって負担の少ない治療ができるよう、研鑽を積みたいと思います。
今まで色々な歯科医院で治療を受けてきたにも関わらず、
なかなか納得出来る結果を得られていない方が多いように思います。
できるだけそのような方が少なくなるといいなと思い、こんなお話をさせていただきました。
今日はちょとトゲのある記事になりましたね・・・。
(※記事の内容は私の私見であり、短時間で行う治療がすべて問題があるということではありません。短時間でも十分な治療内容が行われることはあると考えられます。)
皆さまにお口のトラブルがなく、大切な時間を楽しく過ごせますように。
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁