インフォームド・コンセントからインフォームド・チョイスへ

今日は、患者さまと医療機関との関係性についてです。

私が大切にしている部分です。
予定より長文になってしまいましたが、お付き合いください!

shake hands

photo: A funny handshake? / 70023venus2009

インフォームド・コンセント

日本においてインフォームド・コンセントという言葉が広く知られるようになって、20年以上経ちます。
私の大学入試の小論文でも、そのテーマだったような記憶があります。

 

「十分な説明を受けた上での合意」と訳され、

「医師は、治療法や薬について十分に説明を行い、患者さまによく理解していただいた上で実行する。」と解釈されます。

 

この主役を、
①【医師】とすると、

「医師は、患者に十分な説明を行い、患者は合意の上で、医療行為を受ける。」

解釈としては、

・医師は内容をしっかり説明すること。

・医師は説明義務を果たすこと。

という感じでしょうか。

 

そして、
②【患者】として表現すると、

「患者は、医師から十分な説明を受け、合意した上で、医療行為を受ける。」

解釈としては、

・患者は自分の受ける行為に対して説明を受け、納得した上で受けること。

こちらはこんな感じ。

 

①も、もちろんとても大切な部分です。

説明がなく、それに対して同意もしていないのに、医療行為が進められるのは、ちょっと嫌ですね。
もはやそのようなことは、ほとんど経験しなくなってきたかもしれません。

 

そして、②
こっちの方が、患者さま目線で、安心感を感じますね。

 

しかし、どちらにせよ、「説明と同意」ですから、ちょっと極端ではありますが、
現実的な表現をすると、

 

「この歯は、こういう状態です。こうして治す必要があります。いいですね?」

説明してますし、同意を得るタイミングも取ってますね。医師の主導権の元ですが…。

でも、この場合「はい。」以外に言うのって相当難しくないでしょうか?

勇気と知識と、度胸?など、兼ね備えていなければ結構難しいと思います。
(神経質な患者と思われるかしら?)とか、思っちゃうこともありますよね。

さらに、
「この歯はこういう状態です。こうして治す必要がありますから、やりましょうね。では倒しまーす。」(ウィーン、イス倒れるー。)

これは微妙ですね。
会話になっていません^^;
患者さまには、合意の意思を示すタイミングさえ与えられていない。

これを当たり前だと思っていらっしゃる患者さまが、
いまだに多いように思いますが、私だけでしょうか。
悲しいです。

それで納得なら全く問題ないのですが、
[当たり前だと思っているが、なんとなく不安を感じている]
とすると、よくないのかなと思います。

 

最後のパターンは、少し言い過ぎだとしても、

インフォームド・コンセントという言葉が普及したこと自体は、

当時、医師から説明を受けるということが、
完全に普及していない時代だったのかもしれませんから、

「説明と合意」という考え方が浸透するきっかけになり、
とても大切な意味を持っていたと思います。

インフォームド・チョイス

それに対して、インフォームド・チョイスは、

「患者さまが、複数の選択肢について、メリット・デメリットなどの説明を十分に受け、
よく理解した上で、自らの意思で選択、決定する。」

今までの、主体が歯科医師にある感じと違って、
患者さまにも主体性があるように聞こえませんか?

 

納得したというより納得せざるを得なかった、または、納得させられた
という悲しい経験をしない考え方です。

 

私は、方針の決定とは、治療法の特徴だけではなく、
患者さまの価値観、ライフスタイルなどを総合的に考慮された上で、行われるものだと考えます。

そのような意味で、大切な治療方針の最終的な決定は、
患者さまご本人によって、納得の上で行われるものでありたいと思っています。

 

また、
ただ主体を患者さまに移しましょう、という意味ではなく、
これから私たちと行う医療を、患者さまが自分のこととして認識して、自発的に進めていきましょう。

という意味を持っていると思います。

厳しいように聞こえるかもしれませんが、
医療機関にかかった方は、最後に自分が幸せになるために通院するのですから、
受身的ではなく、自発的であってほしいと思います。

 

もちろん、専門的な知識や難しいことについては、納得できるまで十分に説明を受け、
歯科医師と共に考えた上で、最善の選択のサポート体制の元で進めたいです。

選択の前に、情報を共有することが大事です。

 

患者さまが全部を理解する必要はないことも、あるかと思います。
患者さまに、不利益が降りかからないいようにだけはしていただきたいです。
必要なサポートは十分に受けて選択、決定しましょう。

 

当院では、治療をしないという選択を含め、
複数の治療法についてのメリット・デメリット、肉体的・精神的負担、期間、治療費などをよく説明させていただきます。

そして、患者さまに納得、安心していただいた上で、治療方法を決めていただきます。

 

さて、前半のインフォームド・コンセントのところで、「主役」という言葉を使いました。

実際の主役は、患者さまと医療提供者のどちらでしょうか?

 

考え方によってはどちらにもなりますね。完全な正解はありません。
ここではあまり深い話をすると、別の話になりますので、掘り下げないことにしますが、

 

私は、体を治す患者さま本人と、私たち医療提供者の両方が主役だと思います。
ヒーローとヒロインの両方がいて、成り立ちます。

 

医師は上からでなく、とっつきにくくなく、
患者さまは、受身的でなく自発的に。

本当のゴール=幸せな人生、にたどり着くためには、大切なことだと思います。

医師ー患者関係をフラットに、
コミュニケーションをとりながら、協力して進めていきたいです。

 

 

今回は、患者さまと医療提供者の関係性について、書きました。

ご自分が納得いく医療との付き合い方を選んでくださいね。

そして、病気によって楽しい日常が妨げられないように、
ご自分の体を大切にしてください。

病気になる前に予防です。
理想の栄養、休息、そして、毎日ひとつは日常に楽しさを。

空気が乾燥しております。
お気をつけくださいね。

 

藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁