神経まで及ぶ、深いむし歯の治療。

こんにちは。

今日は、とても嬉しい結果が得られたむし歯治療のお話です。

診断を見極め、ちゃんと治療すれば治ることを改めて感じた治療でした。

初診時の写真です。

上の歯にお痛みがあって、来院なさいました。

自覚症状は

・上の歯が冷たいもので痛い。
・痛かったり痛くなかったり。(ずーと痛いわけではない。)

レントゲンを見ると、

痛みの原因は、上の銀歯が入っている歯のようです。
(左上5番(4番は矯正治療で過去に抜歯済み))

大きなむし歯の黒い影が見えます。

神経の近くまで及んでいそうなので、もう少し詳しく位置関係が知りたいです。
この部分だけ詳細に調べられる、別のタイプのレントゲン写真を撮りました。

やはりむし歯が深いです。

このむし歯の原因は、隣の歯との間の掃除不足です。
隣合わさっている部分から歯が溶けて、中で広がっています。

治療内容の説明

レントゲン写真でこれくらい深いと、普通は治療開始前から神経を取る説明を受けて、
実際に神経を取ることが、多いかもしれません。

しかし、できることなら何とかして神経を残したい!と、思ってしまいます。
まずは残すことを考えて、できることは全てしたいです。

 

今回のむし歯の深さは、中を見て触ってはじめてはっきりしますが、
深さによって、必要な治療の幅が広いので、

事前の説明は、とてもたくさんの可能性をお話しすることになります。

 

  1. 意外とむし歯が小さくて、神経には影響ない通常レベルの一般的なむし歯治療で終われる。
    (今回、この可能性は、ほぼ無いとお話しました。)
  2. 明らかに神経まで届くむし歯の深さなので、神経を取る必要がある。
  3. 神経まで届いていたが、ダメージが軽度なので、
    傷ついた神経に必要な処置を行うことで、神経を残す治療で終えられる。
    →この場合、神経に触れる部分に使う薬剤を
    1.従来の保険適応の材料
    2.保険適用外のMTA(組織親和性、硬組織形成能→「治りやすい」ということです。)
    のどちらを用いるか、事前に決めておく必要あり。

と、あらゆる可能性を説明し、理解、納得いただいた上で、治療開始です。

これは、治療当日ではなく、事前にお話ししています。
内容にご理解、納得をいただき、決めることは患者さまに決めていただきます。

治療の実際

いよいよ治療開始です。
治療時間は1時間いただきました。

歯の周りをクリーニングしたらラバーダムをします。

中のむし歯のせいで、歯が少し白く濁って見えます。
エナメル質むし歯の特徴の一つ、「白濁」です。

横から見ると、むし歯の入り口の穴が崩れて見えています。

治療部位の周りを薬で消毒します。茶色の色が薬です。

まず銀歯を外します。
銀歯の下も茶色くなってます。

次に隣の歯と接しているむし歯の、入り口だけ削ってみます。

中が柔らかそうですね。
実際に、ふにゃふにゃになっています。

まずは大まかにむし歯を取ってみたところです。
これでは、むし歯を取り切れているかわかりませんので、

むし歯だけを青く染めてくれる「う蝕検知液」をつけて、

洗い流すと、左半分の銀歯の下は色がつきませんので、むし歯はほぼ取れているようです。

レントゲンで大きな影だった右半分は、まだ青いです。
質感も柔らかそうに見えます。

視覚から得られる情報量

視覚からの質感は、高倍率拡大して見ないとわかりませんので、
もし、裸眼の治療でしたら、手の感覚だけで判断することになると思います。

視覚からの情報量が減るということは、とても不利なことです。
それだけで、できないことが生まれてしまいます。

 

ということで、拡大視野でむし歯を慎重に取っていきます。

少し削って染めて確認、また削って染めてを繰り返しますので、これだけで5分くらいはかかってしまいます。

神経とむし歯の位置関係

さらにむし歯を取っていきます。
実はこの時点で既にあるものが見えています…

先ほどの写真からさらにむし歯を取り、もう一度う蝕検知液で染めた状態です。

真ん中に2つの青い部分があるだけで、他はもう色がつきません。
ほとんどのむし歯を取りきりました。

この真ん中の2つの青い部分、むし歯が既に神経のツノの部分に進行している事を表しています。

歯の中の白い部分が神経の空間。
上の方はツノのような形をしています。深く進んだむし歯は、このツノに一番近くなります。

2つの青い色の下には、むし歯菌に傷められている神経があります。

その青く染まった部分を取ってみると、

神経がでました。
炎症性の出血があります。

2箇所も穴が開き、しかもそれぞれが結構大きくやられていて、炎症性の出血があります。

 

一般的には、この状態でしたら、即決で神経を取る事になると思いますが、

今回、出血の程度、年齢、レントゲンで見える歯の周りの骨の反応、自覚症状などから、
神経を残す処置を行う事に決めました。

自覚症状とは…

・冷たいもので痛い。
・痛かったり痛くなかったり。(いつもずーと痛いわけではない。)

でした。

 

冷たいものが入った時だけ痛かったり、ずーと痛いわけではない場合、
神経の一部分だけが痛んでいて、多くの神経はまだ健康な状態を保っている可能性があります。

その場合、痛んだ神経にだけ適切な処置を行えば、傷口は自ら治ってくれて、
神経を取る事なく治療を終える事ができる可能性があります。(患者さまの年齢などによって様々です。)

というわけで、今回は、その可能性にかけて、神経を残す処置を行いました。

神経を残す

痛んだ神経だけをこの穴から清潔なドリルでカットし、

痛んでいない神経を歯の中に残し、(写真はありませんが、この時点では出血の無い神経が穴の奥に見えます。)

その上に神経用のお薬を置きます。

成功のために必要なことは、清潔な環境

神経は完全に体内、つまり、清潔な領域です。

カットして消毒し、神経との間に隙間なくお薬を置く、という一連の流れを、
不潔な環境(ラバーダムなしや、唾液の混入など)で行った場合、
細菌感染により成功しない可能性があります。

今回は、むし歯が神経まで達していることを想定して、
ラバーダムもその他の準備も整えた上で治療を開始していますので、残す治療を選択をしました。

 

薬を置いたら、さらにその上に2重で封鎖をして、当日は終了です。

翌回に症状の確認をしたところ、特にお痛みもないとのこと。
順調に治癒経過中と判断できる状態でしたので、歯の形を復元する次のステップに進みました。

 

今回、とても深いむし歯でしたが、神経を取ることなく、治療を終えることができました。
ひと安心です。

この先は、定期的にレントゲン写真と合わせてフォローアップしていく予定です。

歯の神経を守るためには

歯の神経はとても大切です。
神経を守るために患者さまがご自分でできることは、毎日のセルフケアと、歯医者さん選びです。

神経を取る必要があると判断されたむし歯は、本当に神経を残すことができないのでしょうか。
方法によっては、残せるのかもしれません。

そして、神経が残れば、歯の寿命は長くなり、お口の健康はもっと維持できます。

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歯医者さん選びの参考になればと思い、実際に治療なさった患者さまにご協力をいただいて、この記事を書きました。

体に優しい治療とメインテナンスを受けられる歯医者さんを、選択しましょう。

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区
歯周病、インプラント、審美歯科、予防歯科まで、
総合治療の藤井歯科医院