一度神経を取った歯の中が、細菌感染すると…
こんにちは。
今日は根の治療のお話です。
一度神経を取って治療が完了したにも関わらず、忘れた頃にまた痛くなってしまうことがあります。
これは、「体の内側」であるはずの歯の内部に、
「体の外側」の世界の細菌が住みついてしまったために起こることがほとんどです。
ある歯のレントゲンを見てみましょう。
奥から2番目の歯の、根の先端に骨が溶けた様子が確認できます。
これは、下の図のように、
1. 過去に神経を取ったこの歯の内部に細菌が住んでいて
2. その細菌が、もともと神経の出入り口だった歯の先端の穴から外に出て
3. 体と炎症反応を起こし
4. 体が自ら骨を溶かした
ものです。
本来、「体の内側」である歯の内部に細菌はいません。
ところが一度神経を取った歯に細菌が住みついてしまうと、
細菌たちは誰(免疫力)からも攻撃を受けることなく、
閉ざされた空間の中で、歯の中に残された栄養をエサに増殖した結果、
ついに歯の外に影響を及ぼしてしまいます。
神経を取った歯は、このように細菌が住みつかないようするために、
清潔にクリーニングし、その後、清潔に中の空間を埋めておきます。
その埋める材料の一つに、ガッタパーチャというゴムの材料があります。
こちら。
いろいろな太さや形があり、
その歯に合わせてその都度選択し、歯の中を隙間なくビッチリ埋めます。
先ほどのレントゲン写真で、歯の中で細くて白くみえるのが、ガッタパーチャです。
治療によって清潔にされた歯の中に、清潔にガッタパーチャを詰めれば
歯の中に細菌を取り残すこともありませんし、
そのあとの被せ物なども、精度高くぴったり付ければ、
将来、細菌が隙間から歯の中に侵入することも、最大限防ぐことができます。
この場合、一度神経を取ったのにまた痛くなる、ことは最大限防ぐことができるでしょう。
(絶対に再発しないようにすることは不可能と言われています。)
ところが、一度神経を取った歯が再び細菌感染してしまっていることは、少なくありません。
そして、そのように感染した先ほどのレントゲン写真の歯に、
過去に詰めてあったガッタパーチャが、こちらです。
黒い汚れみたいなものに囲まれています。
これは、歯の中で増殖した細菌や、その産生物、エサなどの塊です。
このような細菌感染を起こしている歯は、実際にはこんな様子です。
(先ほどの歯とは違う歯です)
黒く変色している部分の多くが細菌感染している歯です。
その奥に、ピンク色のガッタパーチャが見えています。
黄色い部分は骨が溶けています。
この歯の中にあったガッタパーチャです。
先端にグレー色の湿り気のある何かが付いています。
これも先ほどと同じく、
細菌や、その産生物、炎症性浸出液(体が作ったもの)などの混在したものと考えられます。
これらが歯の内部にずっと入っていたわけですので、
体が異常事態と認識し、防御反応としての炎症反応を起こすのも納得です。
一度神経を取った歯の再治療というのは、
これら歯の中の感染物を取り除き、歯の中をクリーニングすることを指します。
その時に、再び細菌感染してしまわないようにするためには、
必要な手順、ルールを守り、清潔、精密に処置を行う必要があります。
治療中に口を閉じたり、うがいをしてしまうことで、
歯の中に細菌が入り込まないようにするなどの、基本的なことはもちろん、
・歯の中に細菌を含んだ唾液が入らないようにするためにラバーダムをしたり、
・治療期間中のフタは、細菌の侵入を防ぐことのできる、しかるべき材料を使う、
・治療前にクリーニングを行う、
・歯の中の洗浄は超音波式装置を用いて行う、
・強拡大視野で、歯の内部を見て確認しながら精密に治療を行う、
など、様々な必要な守るべきことがあります。
しかし、それらをしっかり行うと、とても時間がかかります。
治療にある程度時間がかかるのは、歯を失わないために必要な、仕方のないことです。
逆に、
・根の治療があまりに速かったり、
・スポッとすぐに取れるフタを使っていたり、
・短時間で治療の終わる「お薬の交換」のためにずっと通院していて、痛みや腫れが引かない
などの場合は、今、何をしているのか、担当の先生に確認してみるのもいいかもしれません。
歯科医院選びは、近い、速い、いつでもすぐ診てくれる、などの利便性も必要ですが、
大切な歯を守るためには、必要な知識があり、必要な処置をしっかり行う歯科医院をかかりつけにすることが、とても重要です。
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院