根っこだけになった歯を抜かずに残す治療(矯正治療)
こんにちは。
前回の記事で、むし歯が歯ぐきの奥まで進行してしまった場合の、
歯が長持ちするために必要なことをお話ししました。
今日はその具体的な治療法のひとつ、挺出術(エクストルージョン)についてのお話しです。
前回のおさらいを軽くしましょう。
この被せ物は、歯ぐきとの境目に隙間があります。
中もむし歯になっていますので、治療することになりました。
被せ物と土台を外してむし歯を取り除くと、残った健康な歯はこのような状態でした。
歯ぐきの上には、ほとんど歯が残っていません。
このまま被せ物をすると、
- 外れやすい
- 残っている根が折れる可能性がある
- 歯ぐきが健康な状態を保てない
- 被せ物をぴったりに作りにくいので二次むし歯になりやすい
と、「長持ちしない」歯になってしまいます。
実際に、このような状態のまま被せ物を入れて、
様々なトラブルを抱えている患者さまにお会いすることは多いです。
そこで、このような歯をできるだけ長持ちさせるために必要なことの一つが、
前回の記事(『歯ぐきの奥までむし歯の進んだ歯に必要なこと(フェルール)』)でお話ししました、
歯ぐきの上に健康な歯が、1.5〜2mm、幅1mm、全周の75%にあることです。
そして、歯ぐきの上に出た、この要件を満たす歯の部分を、「フェルール」と呼びます。
我々歯科医師の間の会話では、
「フェルールを得るために、◯◯をする。」
「このままではフェルールがないから、予後が悪い。」
などと、使います。
今回は、フェルールを得るための方法のひとつ、
挺出術(extrusion、エクストルージョン)
のお話しです。
挺出術とは、矯正治療のひとつで、歯ぐきの中にある歯を矯正力によって引き上げる処置です。
引き上げる歯にはフックを固定し、両側の歯には支えになるワイヤーを接着剤で固定します。
写真では付いていませんが、歯のないところには仮歯をつけて、矯正期間を過ごします。
そして、フックとワイヤーをゴムで結び、ゴムの力で根っこだけの歯を引き上げます。
レントゲンでは、このように写ります。
(ゴムはレントゲンには写りません。)
今回は2週間ごとに2回ゴムを交換し、約6週間で引き上げる期間を終えました。
歯が上方向に移動しています。
歯が上に動いた分の根の先端の骨は、自然に作られます。
挺出術では、歯と一緒に、歯ぐきと骨も上方向に移動します。
そのままでは、歯ぐきの位置が矯正前と変わってしまいます。
歯ぐきと骨だけを元の位置まで戻すために、
矯正治療後に、歯肉弁根尖側移動術という外科処置を行います。
それを終えたのが、こちら。
歯ぐきの上に健康な歯が出ていますね。
フェルールが獲得できています。
ここまでくれば、通常の歯と同じ処置に入ることができます。
隔壁(『大切な歯を救うために!根の治療(歯内療法)の重要ポイント[前編]』で紹介)を作り、
このあと、仮歯を装着し、噛み合わせの安定と、歯ぐきの健康を維持します。
そして、根の治療、土台、被せ物、と続きます。
健康な歯が歯ぐきの上にあることにより、
各処置中に歯ぐきから出血することなく、精密な治療が行いやすくなりました。
そして、被せ物が歯ぐきから上の健康な歯を囲む、「フェルール効果」を得られているために、
将来の抜歯の原因になってしまう、歯根破折のリスクを低下させることができます。
挺出術は、このような根っこだけになってしまった歯を長持ちさせるために有効な処置です。
期間はかかりますが、歯の寿命を伸ばすためには必要な方法です。
似た状態の歯をお持ちの方は、一度考えてみてはいかがでしょうか?
大切な歯を守り、生涯、自分の歯で食事できることは、人生の質を高めます。
そして、健康寿命が延びることに役立ちます。
人生を最後まで楽しみましょう!
何度もしつこくなりますが(笑)、自分の歯は大切です。
今日も最後まで、お読みいただきありがとうございます。
それではまた!
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の藤井歯科医院