大臼歯のダイレクトボンディング

今日は、奥歯にできてしまったむし歯の治療(ダイレクトボンディング)についてです。

患者様は、「歯ブラシは毎日使っていたけど、フロスは使ったことがなかった。」とのことで、歯の間にプラークが溜まってしまい、むし歯ができてしまったようです。

むし歯の周りの歯ぐきには出血があります。
歯の間のプラークが、歯にはむし歯を、歯ぐきには歯肉炎を起こしてしまいました。

ダイレクトボンディングの治療の前にするべきこと

歯科治療の順番の基本は、

歯周病治療

むし歯治療

です。

今回の治療計画でも、ダイレクトボンディングの治療成績を上げるために、
歯肉炎治療→むし歯治療 の順番で行いました。

歯科治療において、長持ちする歯の治療のためには、基本を確実に守ることはとても大切です。


さて、本題のむし歯治療(ダイレクトボンディング)に話を戻します。

ダイレクトボンディングを成功させるために必要な準備(清潔な環境作り)

治療の質を高め、長持ちさせるために大切なことは他にもあります。


それは、治療部位が清潔で乾いた環境であることです。

そのために、まずラバーダム防湿(青いシート)を行います。
それにより、唇、ほっぺた、舌や歯ぐきのない環境を作ります。


ラバーダムによって、治療部位が

  • 清潔に維持できる
  • 乾燥状態を確保できる
  • 唇や頬を広げるので作業領域を広くできる
  • むし歯の穴の下の歯ぐきを押し下げることで、作業スペースを広くできる。(0.5mmくらいの話)


むし歯治療は、歯を削って歯の中を治療をすることです。
そして、歯の中は、体の内側です。

治療は、体の内側が外の世界にさらされながら行われることになります。


ラバーダム防湿により清潔な環境の元で、体の内側が汚染されることなく、処置を進めることができます。


ダイレクトボンディングの質を高め、長持ちさせるためには必須のステップです。

ラバーダムについては、また別の記事で詳しく書きたいと思います。

ラバーダムを設置しても、先程まで唾に触れていた歯ですから、ラバーダムをつけた後で完全な掃除をします。

しかし、お部屋の掃除と違ってどこが汚れているかわかないので、汚れを見えるようにする染色液をつけて、

洗い流すと、このように掃除する場所がはっきりとわかります。

このピンク色の部分を掃除すればいいわけですね。

掃除が終わったところです。

これでやっと治療する環境が整いました。

むし歯を取り残さず、かつ、削りすぎないために必要なこと

次にむし歯を削ります。

むし歯を削ってから、取り残しがないか、色をつけて調べているところです。

先ほどのピンク色の染色液もそうですが、歯科治療は目で見にくいものを相手にしていることが多いので、それを見えるようにする為の方法が多く考えられています。

色のついているところは、削った方がいいところです。

染色液による検査だけの判断ではなく、歯の硬さも併せて調べ、さらに削る必要があると判断しました。
緑の部分だけ削り足します。

むし歯を完全に取り切ったところ。
横から見ると、

これでむし歯は全て無くなり、健康で綺麗な歯だけになりました。

プラスチックが長持ちするために重要な接着システム

ここからは、レジンを歯にくっつける為の一連の接着システムが続きます。

まずエナメル質と象牙質を酸処理します。
青いものは、酸性のゼリーです。

この時、隣の歯を白いカバーで保護して、ゼリーがつかないように処置を進めます。

エナメル質はしっかりと、象牙質は軽く、処理します。

プライマーという液を20秒間塗って、その後5秒間、風をかけて乾かします。
この次に塗る接着剤の為の準備の液です。

ボンディングという、接着剤の役割の液を薄く塗ります。
歯とレジンをくっつかせる為のものです。

その後、青い光を20秒間当てます。
光を当てる時間は大事です。
じっと20秒待ちます。

レジンを隙間なく精密につめるために必要なこと

歯と歯の間のダイレクトボンディングの場合、2つのステップに分けて詰めます。

ステップ1
まずは歯の壁の部分を作ります。

ここが一番難しく、時間もかかります。
歯とレジンの間に隙間がないことで、清潔に保ちやすく、また、フロスがしやすくなります。
とても精密な処置が必要とされます。

壁の部分だけ、レジンで歯を作ります。

ステップ2
噛み合わせの部分の形を作ります。

患者様の年齢が低く、歯のすり減りが少ない歯なので、生えた頃の丸みが残っています。
両隣や反対側の歯の形を参考にして、患者様に適した曲面の強い形を作ります。


レジンは空気に触れている表面は固まらないので、

エアバリア剤をつけて、空気に触れないようにしてから最終硬化をします。

先ほどの青い光を、さまざまな角度から十分な時間当てます。


その後ラバーダムを外して、噛み合わせの確認、調整をしたら終わりです。

最後に、

  • 咬み合わせが良いこと
  • 隣の歯との間が適切な当たり方であること
  • フロスがスムースに通せること

を確認して、全て終了です。


歯の間にできたむし歯を、ダイレクトボンディングによって最小限の削る量で、治療を終えることができました。

技術依存性が高いダイレクトボンディング

レジンを使った治療は、私たち歯科医師がほぼ毎日扱うくらい、馴染みがあります。
しかし、その治療の質が、知識や治療手順、技術による影響を受けやすい治療法です。

  • 必要な手順を厳密に守る
  • 精密で丁寧な処置を行う

ことにより、使いやすく長持ちする治療結果をお渡しできます。

古くなったからと言って、一定期間ごとにやり換えるものではありません。


むし歯ができてしまったら、初めからできるだけ質の高い治療を行い、治療を受ける回数をなるべく少なくしたいものです。
そうすることで歯の寿命が最大限長くなります。


皆さまが快適なお口と健康な体で、楽しい毎日を過ごせますように
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