理想の治療が行われていない現実と、その理由
本記事は、むし歯を治療しても再発、再治療を繰り返す理由について、
奥歯に銀歯が入っています。

銀歯と歯の境目には、

- 左◯:歯が欠けた結果できた隙間
- 右○:咬み合わせの歯と強く当たって細かく欠けた跡
があります。
患者様は、「舌で触るとザラザラする」という感覚だと思います。
今日の内容はちょっと切り込んだ内容です。
ここから先は、私個人の意見であり、それが絶対に正しいわけではないこと、歯科医師全員が同じ考えではないことをご承知おきいただけますと幸いです。
(また、同業者の方々も、私の意見に賛成、反対、反論、批判などあるかと思いますが、様々な意見や解釈があることとして、ご理解いただけますとありがたいです。)
誤った欠けた理由
ザラザラが気になって歯科受診すると、
「歯が欠けてるけど、時間が経ったから仕方ない事ですね」
と、欠けた理由の説明を受けるかもしれません。
しかし、ほとんどの場合、私はそれは誤った理由だと思っています。
私の診療で、時間が経ったから仕方ない、という説明をすることはほとんどありません。
もちろん、治療直後は欠けていなくて、時間が経ってから欠けたのは事実ですが、時間以外の「真の理由」があることがほとんどです。
本当の欠けた理由

欠けていたところは咬み合わせると、矢印のように噛み込んで強く力がかかる部分です。
この部位に銀歯の境界線を作ると、将来、冒頭の写真のように欠けるため、それを避けるデザインにする必要があります。
長持ちするには、そのような本来行うべき「理想の治療」があります。
欠けた理由は、それを正しく行わなかったから、です。
誤解を恐れず言えば、予定通り欠けた、ということです。
*患者様の食習慣、口腔衛生状態が原因の一部として関係していることも多いですが、今回はそれ以外の要素について取り上げています。
銀歯の下は

銀歯の下は、むし歯で黒くなっていました。
これも仕方ないことではありません。
適切な治療を行っていれば、外しても中はつけた当時と同じ綺麗な状態のはずです。
ここでも、理想の治療が行われていないことが、将来にマイナスの結果をもたらしてしまいました。
理想の治療が行われない理由
ではなぜ、本来行うべき理想の治療が行われない、なんていうことが起こるのでしょうか。
この答えは、なかなか複雑だと思っています。
考えられる理由はたくさんあります。
社会システムを含んだ広い範囲での考察
- 日本の医療が保険診療をベースにしていること
- 保険診療の診療報酬は、経験や質などに関わらず、同じ病気に対する同じ治療ならば統一のため、理想から離れていても極端に間違っていなければ、経営に困るようなことにはならないこと(超歯科医師のエゴ目線…)(↓の2.歯科医療の特性からの考察の一つ目とつながる)
- 主に保険診療をベースに学校教育が組まれていること
- 学校教育の内容が統一されていないため、免許取得時点で歯科医師の考え方にばらつきが多いこと
- 免許を取得してもすぐ現場で活躍できるわけではなく、その後に勉強やトレーニングが必要だが、その学び方に差があること
歯科医療の特性(外科治療であること)からの考察
- 理想の治療が行われなくても、問題発生が年単位の未来でタイムラグがあるため、その治療が原因だと歯科医師自身が気付きにくく、治療法改善の必要性を感じにくいこと(本来歯科医師はそれを考え続けなければいけません)
- また、そのタイムラグにより患者様も因果関係に気づきにくいため、患者さん離れが起きにくく、歯科医師が治療法の改善の必要性を感じにくいこと
- 治療方法や考え方が変化(進歩)するためにアップデートし続ける必要があるが、アップデートの方法によって情報のばらつきが出ること(論文、書籍などの文献、各種セミナー参加、学会ガイドラインなど)
- アップデートするか否かやその質は、歯科医師の性格や熱意、経営、運営状態などによって決まるため、ばらつきが出ること
- 失敗の許されない医療とはいえ人が行うことなので、その時の医療提供者の状態が治療に影響を及ぼすこと(体調、精神状態など)
理想の医療が行われていない時は、各治療ごとに様々な理由が絡み合っていると、私は考えています。
後半のアップデート方法や質については、個人のエネルギーの注ぎ方である程度防げることだと思っていますが…。
理想の医療の選び方
理想の医療を受けるために患者様はどうしたらいいのか、が一番大事なことだと思いますが、それを話すと相当な量になってしまうので、別の機会にお伝えさせてください。。。
今回はまずは現実と理由をお伝えします。
理想の医療を受けなかった方が感じる共通のこと
私は、入れ歯と咬み合わせ専門の大学院出身で、歯を失った患者様とたくさんお話をしてきました。
また、大学院卒業後も患者様とのお話の中で、歯を削ることや神経を取ることに対ても、同じようにとても悲しいお気持ちであることを感じてきました。
そして、年齢に関係なく皆さんに共通するのは、
- その状態になるまであまり深く考えてこなかった後悔
- 詳しく伝えてくれる歯科医師に出会えなかった後悔
です。
歯科医師になってもうすぐ23年経ちますが、悲しいことに、ずっと患者様からこの後悔を感じています。
患者様の未来の後悔をなくすために、私にできること
私は未来にその後悔を感じてしまう人を一人でも減らしたくて、あの手この手で患者様に必要な情報をお伝えしています。
このブログを書くのも、お口でお困りの方に将来後悔して欲しくない、という気持ちで続けています。
私たち専門家が真実を伝えなかったら患者様は何も知ることはできません。
これからも体力と時間の許す限り、お口の健康に本当に必要な治療についてお伝えしていきます。
先日、患者様に「先生、説明している時、楽しそうに話しますよね。」と言われました。
その通り、実際に楽しんでいます。
診療が終わると声がかすれていることもありますが、その度に、やりたいことをやれているという幸福感を感じます。
そして、
このブログを書いている時は、一人でも多くの人に届いてくれーーーっ!と念じていますw
皆さまが快適なお口と健康な体で、楽しい毎日を過ごせますように
YF DENTAL OFFICE
名古屋市千種区池下 ナゴヤセントラルガーデン内
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「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|YF DENTAL OFFICE
