歯を補う選択肢:歯の移植をご存知ですか?

こんにちは。

できれば避けたい最後の手段、抜歯。

残念ながら抜くことになってしまった場合、その後を補う方法、
歯の移植をご存知でしょうか?

人工物ではなく、再びご自分の歯で噛めるようになる方法として、とても良い方法です。

抜いた歯を補う方法

一般的に抜いた歯を補う方法として

・インプラント
・ブリッジ
・入れ歯

が知られています。

しかし、この3つはどれも人工物で体の機能を復元する方法。

しっかり行えば、どの方法も良いのですが、
当院では、その前に、自分の歯で補う「歯の移植」を選択肢に入れて、ご説明させていただいております。

歯の移植とは

歯の移植は、正確には自家歯牙移植といいます。

悪くなった歯を抜いて、主に親知らずを移植します。

・親知らずがない
・大きく虫歯になっている
・形が適していない

などの場合は、できないこともあります。

 

移植だからといって、特別痛みや腫れが強いわけでもなく、
患者さまの負担は特別大きくないことがほとんどです。

処置時間は、麻酔、クリーニングからお帰りになるまで、1時間から1時間半ほどです。

ご自分の体の中での移植ですので、条件が揃えば結果は良好で、
再びご自身の歯で噛めるようになるとても良い方法です。

治療の流れ

移植する親知らずの根っこが成長途中の場合

将来、一番理想の状態で経過します。

一旦抜かれた後、移植先で引き続き根の成長が進み、
神経の生きた健康な状態で安定します。

この場合、何もせずにも噛み合わせの歯と合うか、
合わない場合は、歯の形を付け足して合わせます。

移植する親知らずの根っこの成長が終わっている場合

成長が終わった親知らずを一度抜歯すると、神経が死にます。

移植後に、死んだ神経の治療(歯内療法)を行い、歯の内部に細菌感染が起きないようにして、
最終的には被せ物などで歯の形を整えます。

 

治療例

1.

左下の奥歯が前後方向に割れて、そこから細菌感染を起こし、骨が溶けてしまっています。

歯を残す可能性を考えながら根の治療を試みましたが、残念ながら、残すことはできませんでした。

ーー余談ですーーーーーーーー
歯にヒビがあっても、感染の程度や範囲によっては、歯を残せることがあります。

当院では、歯が割れたり穴が空いている場合でも、
補修可能な範囲内でしたら抜歯はせず、歯を残すことを最大限試みます。(患者さまとよく相談の上。)
ーーーーーーーーーーーーーー

術前パノラマ

親知らずは右上以外に3本残っていますが、
歯磨きが難しく周りの歯ぐきの炎症が強かった右下親知らずをドナーとしました。

この場合、傷口が左右に渡り、術後の不快感を感じる範囲は広くなりますが、
患者様とよく相談の上、決定しました。

#36歯根破折

レントゲンに割れた様子は写っていませんが、 矢印の場所では骨が溶けている様子がわかります。

移植後

移植された親知らず

移植歯修復後6ヶ月

6ヶ月経過。根の周りに骨ができてきています。

 

6ヶ月経過のレントゲンでは移植した親知らずの周りに健康な骨ができていて、
順調に経過していると考えられます。

 

ちなみに、この歯が割れた原因は、過去に神経を取って薄くなった歯に、
歯が引き裂かれるような向きで噛む力がかかったことです。

が、、、
もっと原因を突き詰めると、

以前に神経を取ったこと、
さらには、むし歯を何度か繰り返したこと、

さらには、

むし歯の原因の歯磨き(フロス含む)を十分にできていなかったこと。
むし歯になりやすい食生活だったこと。

と、

はじめの一歩を踏み出さないようにするためには、毎日の習慣まで遡ります。

2.

術前パノラマ

左上の奥歯は過去に神経を取り、一旦治療が完了していますが、
歯の中に細菌感染が起こり、大きくむし歯になっています。

 

#27歯根破折

①歯の中で広がったむし歯。
②根の周りの骨は溶けています。

そのため、歯は弱くなり割れて、歯を支える骨は細菌からの被害を受けて溶けています。
むし歯がここまで進むと、歯を残す手段は絶たれてしまいます。

すぐお隣に親知らずがありますので、この歯をドナーとして移植を行いました。

移植後パノラマ

移植後デンタル 

歯を失わないために

一度神経を取ってしまうと、その後に様々な問題を引き起こす可能性が生まれます。

ですので、はじめに神経を取るようなむし歯を作らないことがとても重要です。

 

もしも、むし歯が深くなってしまっても、
神経を残す方法をとることで、歯の寿命は大きく変わります。

 

それでも神経を取る必要がある場合は、
適切な治療コンセプトに則って、必要な感染防止対策と拡大診療の元で、
治療を受けましょう。

一回目の神経を取る治療の状態で、その後の歯の予後、寿命は全く変わります。

 

今日は歯の移植のお話でした。

ご興味がございましたら、抜歯する前に一度ご相談ください。

藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁