繰り返す再治療によって、神経が死んでしまった歯の治療(後編)

こんにちは。

前回は、

神経が死んだ結果、歯ぐきが腫れた歯の治療について、準備段階の大切な処置のお話でした。


前回の内容の要点は、

神経の治療をする前には、治療中に歯の内部が細菌感染しないように、

  • ラバーダム防湿をする
  • ラバーダムを設置したら、治療領域をしっかり掃除する

でした。


そこまで行われなくても、治療後、順調に経過することもあるでしょう。

短期間ではうまくいくこともあるかもしれません。
(治療中に感染すると、短期間でも痛みが出ることもありますが…。)

しかし、数年、さらに長い期間では、この時に唾液などから感染したことが原因で、次の病気が発症するとしたらいかがでしょうか。


私は絶対に省きたくないステップだと思っています。

そして、治療後の継続する痛みや、プラスチックの剥がれなどの不具合が無いことが、この効果を表していると思います。
(それ以外の精密な処置の積み重ねによるものですが、その一部として大事という意味です。)

治療する歯の周りが綺麗になったら、歯に詰めてあったプラスチックを削り取ります。

プラスチックの詰め物の下にはむし歯があり、神経まで通じていました。

細菌は神経のあった空間(歯髄腔)で増殖し、その影響で最初の写真のように、歯ぐきが腫れています。


この後、死んだ神経を取るのですが、

その前に、「隔壁」という大事な処置を行います。

プラスチックを削り取って、側面に穴が空いた状態は、歯に壁がないことを意味します。

隔壁は、その失われた壁を復元する処置です。


隔壁は、その後のあらゆる処置の質を上げてくれます。

  • 治療中、歯の中に薬液を溜めながら処置ができる
  • 次回までの期間、仮のフタを安定して維持できる
  • (今回の場合は)治療期間中、食べ物が歯の間に挟まらず、快適に過ごせる

隔壁を行ったら、いよいよ歯に穴を開けて死んでしまった神経を取ります。

隔壁が、歯の壁の役割をしていることがわかりますね。

隔壁がなかったら穴だった部分から薬液などが漏れてしまい、歯の内部の消毒が効率的にできません。


さて、この段階でもう一つ大事なことがあります。

それは、

神経を取るために歯を削るのは、最小限に留める

です。


逆にたくさん削ると、

  • 入り口の穴が大きく
  • 穴の中の空間も広い

ことを意味します。


処置をする歯科医師としてはその方が、

穴が大きいために中がよく見えて、
空間が広いために作業スペースも広く取れるのですが、

その分、歯の強度は落ちてしまいます。
強度の低下は、歯が割れる原因になります。


根管治療後のトラブルは、歯ぐきの病気の再発か、歯が割れてしまうこと、のどちらかが多いです。

そして、歯が割れてしまうと、抜歯の選択肢しかないことが多いため、根管治療中に歯の強度を維持することははとても大切なポイントです。


神経の治療が清潔に完了できても、その時の弊害として強度が落ちてしまうと、結局長持ちしないということです。

↑中が内広がりなのが、わかりますでしょうか。
穴をもっと大きくすれば一気に全体が見え、処置は簡単に早く行えます。
しかし、強度は落ちます。


強度を落とさず、根管治療を完了するには、

  • マイクロスコープや強拡大ルーペによる拡大視野で
  • 十分な光量のライトによる明るい環境のもと
  • 削る量は最小限に
  • 小さな穴から
  • 様々な角度で見ながら
  • 細く小さな器具を用いる


そして大前提として、落ち着いてこの処置を行うためには、

必要な治療時間を十分に確保する

も必要です。


当院では、自由診療の予約時間は2時間をいただいています。
そのため一日に診療できる人数は4名と、少なくなってしまいます。

しかし、学べば学ぶほど、歯科医療というものは、
そもそも15分や30分の短時間でできるものではないことがよくわかります。

また、治療前の説明や話し合いにも、十分な時間を確保したいです。


通院の一連の流れでは、

  1. お悩みやお考えを伺い
  2. 検査
  3. 治療計画や費用の説明
  4. 治療そのもの
  5. フォローアップ

と、どのステップを取っても、
患者様に最大のメリットを持ち帰っていただくためには、時間が必要です。


歯科治療は繊細な処置が必要なので、短時間で済むものではないことを知っていただき、かかりつけ医院選びの参考にしていただければと思います。


私にできるのは、自分が納得する医療を患者様にお渡しすることです。

医療現場に立つ以上、自分に甘えることなく全力を出し切ります。


皆さまが快適なお口と健康な体で、楽しい毎日を過ごせますように

YF DENTAL OFFICE
名古屋市千種区池下 ナゴヤセントラルガーデン内
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「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|YF DENTAL OFFICE

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