痛くないのにむし歯?
こんにちは。
皆さんは虫歯のイメージってどんなものでしょうか?
黒くて、穴が空いていて、冷たいものや甘いものでしみる。
そんな感じでしょうか?
でも、実は、むし歯の中で1、2を争う頻度で遭遇するのは、
白くて穴もなく、しみないし痛くもない。
こんなむし歯なんですよ。
どういうことでしょうか?
写真を見ながら解説します!
初診時の写真です。
私たちのクリーニングはなく、患者さまがご自分で掃除したままの状態です。
きれいに磨いていらっしゃいます。
むし歯がどこにあるかわかりますか?
むし歯のできる訳
これは、皆さんご存知の通り、
「むし歯菌が酸を出して、歯を溶かす。」
ですね。
当たり前ですが、むし歯菌のいるところに、むし歯ができるということです。
では、むし歯菌はどこにいるのでしょうか。
むし歯菌の居心地のいい場所
それは、掃除が行き届かない場所です。
あともう一つ、自浄作用が行き届かないところ。
自浄作用とは、
食べ物や、舌、頬の粘膜などが歯に触れたり、唾液の自然な流れで、
お口の中が自然にきれいにされる作用のことです。
自浄作用には個人差があって、よく働く環境の方は、むし歯ができにくいのです。
例えば、
・唾液が多い。→よく流れる。
・繊維質のもの(肉、繊維の多い野菜)を多く食べる。→食べ物がブラシの役目。
・歯並びがいい→唾液や食べ物の流れがよく、滞らない。
とはいえ、自浄作用だけではむし歯菌が取りきれないので、歯磨きをしますね。
逆に自浄作用が働きにくくて、かつ、歯磨きを十分にできない人や部位には、むし歯ができやすいということです。
では、自浄作用が働きにくく、歯磨きもうまくできない場所
つまり、むし歯菌の居心地のいい場所とはどこでしょうか。
・歯の溝
・歯と歯茎の境目
・歯と歯の間
です。
まさに、歯磨きでブラシを当てましょうと言われる場所そのものですよね。
赤丸のような出っぱている面は自浄作用が強く、むし歯になりにくいです。
歯ブラシだけでは取りきれない?
今の時代のように歯磨きが普及すると、
歯の溝や歯と歯茎の境目は、皆さん上手に掃除できています。
はじめにお見せしたお写真の患者さまも、歯ブラシはとてもお上手に使っていらっしゃいます。
では、どこにむし歯ができてしまったのでしょうか。
歯の間から始まるむし歯が、歯の中にできてしまいました。
歯ブラシだけでは取れない、歯の間のむし歯菌が原因です。
まさに、
「歯磨きしていたのに、むし歯ができてしまった!」
です。
やはり、このブログでも何度か登場する、歯の間のお掃除が必要なのですね。
この方の歯の間の広さでしたら、デンタルフロスがおすすめです。
痛くないの?
実は、このむし歯、進行の程度は中程度なのですが、痛みは全くありません。
そして、あと数ヶ月放置しても痛みは出ないかもしれません。
しかし、ある時、急に穴が開いて、痛みや不快感が出ます。
どういうことでしょうか。
むし歯は、表面の小さな穴から始まり、
穴の中では、まるでドームの空間のように広がりながら、歯を溶かしていきます。
そして、中の空間が広くなると、ドームの屋根が薄っぺらになり、
ついには天井崩壊して、上空から見ると中が丸見えになる、つまり、穴が開いたむし歯になる訳です。
歯の溝のむし歯の場合
始まりの穴は噛み合わせの溝にありますから、
噛むたびに、穴の中に刺激が加わり、不快感を感じやすいです。
また、噛む力を受けやすいので天井崩壊しやすく、気づかれやすいです。
歯と歯の間のむし歯の場合
始まりの穴は、歯と歯の間にあるので、
穴は向かい合う歯に蓋をされていて、中に刺激が加わりません。
つまり、たとえ歯の中でむし歯が進行して大きな穴になっても、
刺激が入らないために、気づきません。
むし歯はどんどん進行し、中の空間が大きくなり、いよいよ表面の歯が薄くなったときに・・・
ついに、パキッと崩れて穴が開きます。
しかも、それまでには大きく進行していますから、いきなり大きな穴が開きます。
ここでやっと痛みを感じます。
ちなみに、このむし歯には、天井崩壊の予兆が見えています。
予兆がわかりますか?
白く濁って見える歯は、むし歯で弱くなった歯です。
答えは、
天井部分にヒビが入っています。
強い力がかかれば、割れてしまうかもしれません。
このヒビは、ライトの行き届かない裸眼の診療では、見えにくいこともあります。
やはり、拡大視野の診療は歯科治療には必須です。
治療だけではなく、治療前の診査においてもなくてはならないものです。
この方の今後の予定は、
・歯磨き、デンタルフロスの練習
・むし歯治療(むし歯だけを最小限の大きさで小さく削り、形を復元します。)
です。
むし歯治療だけでは根本解決になりません。
その原因を取り除きましょう。
予防の大切さ
このように、歯の間にできるむし歯はあまり痛くないので、多くの方が気付かず、
別の目的のための歯科受診で見つかることが多いです。
しかし、すでに進行してしまっていることもありますので、
症状がなくても、一度状態を知るための受診がおすすめです。
そして、受診できなくても、デンタルフロスや歯間ブラシを使いましょう。
歯の間は、歯ブラシでは触れることができません。
歯の間のおそうじ習慣の有無で、歯周病やむし歯の原因菌の量は様変わりし、病気を効率的に予防できます。
みなさまがお口のトラブルなく、快適な生活を楽しめますように。
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁