「噛み合わせの調整」について(後編)
こんにちは。
今日は、前回からお話している「噛み合わせの調整」についての後編です。
では早速、前回のお話の続きをはじめます。
当院でのAさんの治療
Aさんの噛み合わせは、元々のそれから崩れたものに変化しており、
崩れた噛み合わせの位置で、なんとかして噛まざるを得ない期間がありました。
そのために、噛む筋肉が過緊張、硬直し、スムースに動かなくなってしまっています。
顎がガクガク震えてしまいます。
そこで、筋肉の硬直を取ってスムースな動きができるようにするために、
マウスピースを用いて、筋肉の柔軟性を取り戻してもらう顎関節症治療を行いました。
また、削った歯に対しては、むし歯治療用の樹脂で盛り足し、形を復元しました。
その他、噛み合わせに不調和を生んでいると考えられる、形に不備のある古い被せ物を外し、
仮歯に置き換えたのち、理想の形を見つけるために何度か調整を行いました。
また、噛みしめの原因になる要因の一つとして、
可能性があることがわかっている血糖値の変動と食事の摂り方について説明し、
顎関節や筋肉への負担過重のリスクを最小限に留めるようにしました。
以上により、筋肉を元に近い状態に戻し、歯の形も復元、
そして今は、最終の被せ物をセットする直前です。
実は、先週セット予定でしたがお口の中に入れてみたところ、
もう一歩改善できそうな点があったので一度お預かりし、
技工士さんとよく相談の上作り直して、次回セット予定です。
悪くはなかったのですが何かあった時に、
「あれが原因かもしれない…」と、心残りになるのは嫌だったので、
事情を説明して、セットを次回に延ばさせていただきました。
image by Mouth / morganmorgan
噛み合わせ調整の大切なこと
噛み合わせの調整は、このように一本単位で新しい被せ物を入れる治療や、
お口全体を含めた噛み合わせ治療、入れ歯の治療、など、様々な場面で行われます。
しかし、噛み合わせの調整一つとっても、考することはたくさんあります。
歯周病に対する噛み合わせ調整の必要性
たとえば、歯周病で歯ぐきが傷んでいるときの噛み合わせの調整について。
歯ぐきが傷んでいると、歯ぐきは歯を異物と認識して、追い出そうとします。
その時、歯はいつもの位置より少し押し出されて、わずかに高くなることがあります。
患者さまは、「高く浮いた感じがする」とおっしゃいます。
程度と時期にもよりますが、この場合は、歯周病治療を行うことで、
痛んだ歯ぐきが引き締まり、そして歯の位置は元に戻って、高い感じが消えることもあります。
被せ物の入っている歯で、作り直す予定があるのでしたら、話は別ですが、
もしもこの時に自分の歯を削ってしまうと、削られた歯は二度と戻ってきません。
削る必要がなかった歯、ということになってしまいます。
本当に削るのが必要か、削るのではなく歯石除去で経過を追いかけ、
それでもダメな時に削るのか、見極めが大切です。
歯周病治療における、噛み合わせの調整についての考え方は、先生によって様々かもしれません。
削るだけ?
噛み合わせの調整というと、削る(引き算)ことで行われるイメージがあるかもしれません。
でも、合わせる基準によっては、
部位別に削る(引く)だけでなく、足すことも混ぜながら行うものです。
足すのは、樹脂を盛り足したり、被せ物詰め物を作り直すことで行います。
噛み合わせ調整のポイント
大切なポイントは、
- 何を基準にして調整するのか(基準の設定、ゴール設定)
- 減らす(削る)だけでなく、足す部分もあり得る
- 歯や歯ぐきの炎症はコントロールできているか
- 歯、関節、筋肉の協調
を総合的に考慮することです。
患者さま目線と歯科医師目線のギャップ
痛みをお持ちの患者さまにとっては、削る(引く)噛み合わせの調整を行うと、
痛みがすぐに消えることもあり、その時の苦痛の解消を考えれば、
「適切な治療」と感じるかもしれません。
しかし、その後の他の歯を含めたバランスの変化や、その歯を削ること自体の弊害など、
将来につながる様々なデメリットを考えると、
すぐに楽になるからといって歯を削らないほうがいいこともあります。
「今の痛みを取る」だけではなく、「将来につながる根本解決を図る」ことが大切です。
患者さまの納得
そして、処置そのものと合わせて大切なことは、
それらをしっかり説明してくれて、その時必要な処置を患者さまが理解し、選択できること。
流れ作業のように、「削りますねー」と説明?と処置を受けることで、
後悔だけはしないでいただいきたいと思います。
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ここまでお読みいただき、お疲れ様でした。
今回のシリーズは、文字が多くなってしまいました。
大変お疲れ様でした。
噛み合わせも大事らしいぞ、ということが少しでも頭に留まっていただいたら幸いです。
皆さまが快適なお口と共に、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
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名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、残す」藤井歯科医院