奥歯のセラミック治療(後編:セラミックのセット)

こんにちは。
今回は、前回「奥歯のセラミック治療(前編:むし歯治療〜型取り)」の続きです。

前回は、↓の内容でした。

1.治療前

2.ラバーダム装着

3.銀歯を外し、

4.むし歯を取り除き、

5.露出した象牙質を保護(IDS)。

6.この後、精密な型取りを行い、治療終了。

型取りした歯型は歯科技工士さんの手に渡り、セラミックを手作業で精密に製作してもらいます。

担当歯科技工士について

当院では、自由診療の製作物は、自由診療専門の歯科技工士さんにお願いしています。

そして、セラミック治療を成功させるためには、歯科医師と歯科技工士が、共通の考え方とデザインに関する知識を持っている必要があると考えています。

そのため、歯科技工士さんは、私が過去に受講した歯科医師向けの接着修復セミナー(年間コース)を、私と一緒に受講しました。
その後も、歯科技工士と歯科医師が共通のコンセプトを持ち、患者様に最善の結果をお渡しできるよう、コミュニケーションを重ねています。

今回も、担当歯科技工士さんにセラミックを製作してもらい、

精密で美しい製作物を作ってもらいました。

治療2日目(セット日)

さっそく仮歯を外し、

出来上がったセラミックを、確認のために入れてみます。

適合、隣の歯との関係性、噛み合わせ、色、などを確認します。

患者様の中には、被せ物を着ける日は治療時間が短く軽い処置の日、と過去の経験上お感じの方がいらっしゃいます。
しかしセットの日は、長持ちのために必要な処置の項目は多く、当院では90分の予約枠をいただいています。



では治療開始です。

まず大前提として、セラミックを歯に接着するためには、清潔で乾燥した環境が必須なので、ラバーダムを装着します。

仮歯の入っていた期間に歯の表面は汚染されているので、クリーニングする必要があります。

汚れを見えるようにするために染色液をつけ、
洗い流すと汚れている部分にうっすら色がつきました。

クリーニングが終わりました。

ここから、歯の表面にはさまざまなステップの処置が必要です。

  1. IDS表面(レジン)のサンドブラスト処理
  2. エナメル質の酸処理
  3. IDS表面(レジン)のシラン処理
  4. 全体のプライミング処理
  5. 全体のボンディング処理

一つずつ、解説します。


1.IDS表面(レジン)のサンドブラスト処理

緑色の部分には、前回の治療で象牙質を保護するためのレジンが接着してあります。

前回固めたレジンを接着剤とくっつけるために、まずは表面に細かい傷をつけて表面積を増やします。
そのために、

27μmのアルミのパウダーを吹き付けてレジン表面を傷つけます。

この時、パウダーが飛び散り、周りの歯を傷つける可能性があるので、金属製の防護用の壁を設置し周りの歯を保護します。

処理の終わったところ。

処理後は半透明のレジン表面がくすんでいます。


2.エナメル質の酸処理

エナメル質の表面積を増やし、接着剤がくっつきやすくするために、酸性の液でエナメル質表面を処理します。

酸性の液が隣の歯につかないようにするために、カバーをかけて酸処理します。
エナメル質が白くなっています。

これで、接着剤に触れる表面積を増やすステップが終わりました。


3.IDS表面(レジン)のシラン処理

次に、レジン表面が接着剤とつきやすくするためのセラミックプライマーを塗ります。

レジンだけに塗ります。


4.全体のプライミング処理

エナメル質とレジン両方にプライマー液を塗ります。

20秒間塗って、弱い風で乾燥します。


5.全体のボンディング処理

エナメル質とレジン両方にボンディング液を塗ります。


ここまでで、接着剤がしっかりつくための5つのステップが終わりました。
この時、アシスタントスタッフは同時進行で、セラミックの内側に8つのステップの処理を行なっています。

くっつける直前に、

全ての準備が整った状態です。

セラミックに接着剤をつけ、

歯につけた状態です。
当院では、接着剤は温めたコンポジットレジンを使っています。

セラミック全体から不足なく接着剤がはみ出ています。

はみ出した分を綺麗に取り除き、

LEDライトを当てて固めます。

全体に十分な光が行き届くために、さまざまな角度で全ての部位にLEDライトを当てます。
各箇所で10秒間ライトを当て、合計2分間くらいかけて全ての接着剤を固めます。

レジンは酸素と触れると固まらないので、酸素を遮断するゼリーを歯につけて、さらにLEDライトを当てます。

水のように見えるのが、透明の酸素遮断用のゼリーです。

さらにライトを当てます。

ゼリーが乗った状態でのライト照射。

全ての処置を終え、セラミックをつけ終わったところ↓

この後、ラバーダムを外して咬み合わせを確認し、微調整を行いました。


セラミックと歯の境目に段差はなく、スムーズで連続した面になっています。

また、
・ラバーダム環境で
・治療前にクリーニングし
・処置中も唾液による汚染はない
ため、歯の内部が清潔に保たれた状態で、全ての処置を終えています。

また、ラバーダムによる乾燥環境によって、接着剤が本来の性能を発揮できています。
そのため、長期に渡り細菌の侵入を防ぐことができます。

このように理想の環境で治療を終えると、治療後の違和感はほぼなく、患者様の体の一部として長期間機能できるセラミックになります。

また、患者様のセルフケアも行いやすく、通常の歯ブラシとフロスを行っていただければ、さっと汚れが取れるので、快適なお口で過ごしていただけます。



本来、歯の治療は行わなくていいように、初めのトラブルを作らないことが一番です。

そのためには、まずは食習慣、生活習慣です。
次に、歯磨きや定期メンテナンスなどの予防習慣。


なんでも、本質的で一番大事なものは、地味なことが多いですね。
でもやっぱり大事です。


もしも、不本意ながら治療をする必要ができてしまったならば、長持ちする安全な治療で終えておきたいものです。



日々の診療では、まず一番大事な予防の考え方、方法をお伝えしています。

治すのは必要なことですが、2番目です。
ただ、治すならば、完璧を目指しています。



ここまでお読みいただきありがとうございました。
今日は今年最後の投稿でした。

来年も皆様にとってより良い一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。


皆さまが快適なお口と健康な体で、楽しい毎日を過ごせますように
YF DENTAL OFFICE

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