銀歯の下のこのむし歯、いつからあった?

こんにちは。

今回は、ある銀歯についてのお話です。

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奥から3番目の小臼歯(写真右から3番目)の銀歯にフロスがひっかかる部分がありました。

フロスがひっかかるのは、銀歯と歯の適合が甘いためでしょう。
これでは、日頃のメンテナンスをしようにも、思うように綺麗にしきれません。

 

銀歯を外して、むし歯があれば取り除き、その後、ぴったりの歯を入れ直します。
そうすることで、患者さんの毎日のセルフケアが行いやすくなります。

治療の目的は、ご自身の大切な歯を生涯にわたり守ること。
そのために、セルフケアができる環境を作り直すことでもあります。

 

レントゲンでみると、

デンタル

他の歯にも問題はありますが今回は矢印の部分です。(他の歯も順番に治していきます。)

大きくしてみると、

レントゲン拡大

歯と銀歯の移行部分がスムースではりません。

銀歯を外してみると、

除去

水色の矢印は、適合の甘かった部分についた汚れ(細菌やそのエサになるものなど)です。

歯の表面にうっすら白く見えるのは、元々銀歯をつけていた接着剤です。
歯の真ん中あたりに、赤い矢印で示した茶色い歯があります。

まず接着剤を外してみてみましょう。

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全体に茶色くて質感も柔らかそうです。
むし歯のようです。

どこがむし歯がはっきりとわからないので、
むし歯だけ色をつけてくれる液(う蝕検知液)に助けてもらいます。

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一度全体をう蝕検知液で満たしてから洗い流すと、

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真ん中あたりが青くなっています。
ここがむし歯の多い部分です。

 

でも、適合の甘かった銀歯の縁の辺りには、むし歯はそれほどなく、中で単独で存在しているようです。

...、

ということは、このむし歯は、適合の甘かった銀歯の縁から、時間をかけて中まで入ってきたものではなく、元々、以前治した時からあったものなのでしょうか。泣

 

もしそうだとしたらその原因はいくつか考えられますが、こうならないようにするためには、

  1. むし歯の取り残しの確認を、歯の色だけとか硬さだけ、などの偏った調べ方でなく、
    複数の指標で調べる。
  2. 手の感覚だけではなく、十分に明るく強拡大の視野で、目からの情報も十分入れて治療する。
  3. 丁寧に治療する。
  4. 清潔に治療する。

 

最後の二つはあまりにざっくりな言い方になってしまいましたが、
丁寧に清潔に治療しようとすると、ある程度時間がかかります。

そして、実際には意外とそのような治療を受けていらっしゃる方が、少ないのかもしれません。
少なくとも、すべての治療を20分くらいで終わらそうとすると、かなり厳しいのではないでしょうか。

 

あとは、2.裸眼の治療ではなく、できるだけ強拡大+ライトの視野での治療。
治療では、患者さんが思っているより、「見えていない」現実があります。

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拡大して見る世界は、裸眼とは別次元です。

驚いてしまうかもしれませんが、裸眼とチェアのライトでは、
「なんとなく」しか見えていないんです。
(拡大視野に慣れるとこう思いますが、裸眼に慣れている場合、「なんとなくしか見えていない」とは感じないと思いますが…)

 

まず、拡大の問題。

歯科が相手にしているのは、主に細菌。
いかに細菌の足場が歯の表面にできないか、細菌が歯の中に入らないか。
そのためには、細菌の大きさレベルで適合を考える必要があります。

裸眼で見える世界は、そのスケールとはほど遠いものです。
視力がいいから大丈夫とか、そういうことではなく、拡大しないと見えません。
どれだけ視力が良くても、千円札の模様の中の文字は見えません。

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1000
YENの、YENの中は、

yen

NIPPON GINKO と、書いてありますが、どれだけ視力が良くても見えないですよね。

拡大した視野での治療というのは、こういうことです。
これくらいの精度でいきたいです。

 

そのためには、強拡大のルーペか、マイクロスコープを用いた治療が必要です。
大切なのは、すべての治療をこの精度で行う、ということです。

何かの治療の時だけこれらの拡大システムを使うのではなく、
診査から治療、クリーニングまですべての処置を、強拡大で行うのが理想です。

 

次に、光の問題

患者さんがチェアに横になった時に、とても眩しいライトですが、
あのライトのみの光では、うっすらボヤーンとした足りない明るさの中で治療することになります。
しかも、一方向からの光りで影もできますし、なかなか見たいところがはっきりと明るくは見えません。

そうなると、あとは手の「感覚」や、過去の「経験」で治療を行うことになります。

結果にはばらつきも出やすくなるでしょうし、光の当たり方や、患者さんと歯科医師の姿勢など、
環境が変わった時には、それはより大きくなることも考えられます。

いつ、どのシチュエーションでも同じ結果が出るような、再現性の高い方法をとるのが理想だと思っています。

 

1.の、むし歯の取り残しの調べ方は、

  • 歯の硬さ
  • う蝕検知液
  • 歯の色

と、複数の項目で判断します。
例えば硬さだけ、や、歯の色だけで判断すると、まだむし歯が残っていることもあります。
う蝕検知液を用いて、客観的に検査することはとても重要です。

 

今日は、むし歯を取り残さないために必要なこと、についてのお話でした。

 

お口のメンテナンスは、クリニックと患者さんの二人三脚によって達成できるものです。

しかし、治療内容に関しては、患者さんにはどうもできないことです。

できることは、信頼できるかかりつけ歯科医院選びです。

 

近いから、遅くまでやっているから、などの利便性以外にも、
自分の体を本当に大切にしてくれるクリニックか、
という根本に立ち戻った目線も、大切なのかもしれません。

 


皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院