親知らずを残すデメリット(隣の歯への影響)

こんにちは。

前回は、親知らずを抜くメリットについてお話しました。

今日は親知らずを残しておくデメリットのうち、隣の歯に起こりやすい変化についてお話します。

一番右が親知らず。歯間部のケアができないと、親知らずそのものだけでなく、前の歯にも被害が及びます。

一番右が親知らず。歯間部のケアができないと、親知らずそのものだけでなく、前の歯にも被害が及びます。

前回、親知らずを残すと、前の歯にむし歯や歯周病を作ってしまうことがある、というお話をしました。

今日はその中でも、歯周病をきっかけにそのあとに起こる、
様々な変化を、順を追って見てみましょう。

 

1汚れたまる

1.歯間部のケアが十分にできないと…

親知らずの生えている周辺は狭いため、掃除道具がうまく使いにくいです。
特に、フロスや歯間ブラシを使っていなければ、常にプラークが存在してしまいます。

2歯肉炎

2.歯の間の歯ぐきが炎症を起こします。

歯ぐきが痛み始めました。

3歯周炎

3.歯ぐきの炎症が進行し、その下の骨が溶けてしまいます。

ついに、歯を支える大切な骨が溶けてしまいました。
骨の位置は下がっています。

その頃には、歯茎の違和感を自覚します。
たまに腫れたりもします。

4抜歯

4.親知らずを抜歯しました。

歯ぐきの違和感や痛みを取るために、親知らずを抜歯しました。

5抜歯後治癒

5.すでに歯周病で溶けた骨の高さに合わせるように、歯ぐきが下がって治ります。その結果、根の表面が歯ぐきの上に出てしまいます。

抜歯の後、歯ぐきが綺麗に治りました。
しかしこの時、すでに溶けている骨の位置に合わせて、歯ぐきが下がって治ります。

その結果、根の表面が歯ぐきの上に出てしまっています。
本来歯ぐきの中にある根の表面は、歯の頭の部分(エナメル質)に比べ、とても柔らかく、抵抗力が弱い部分です。

6清掃難しい

6.露出した根の表面は、歯ブラシが届きにくい低い部分のため、不潔になりやすいです。

歯ぐきが下がって根が出ている部分は、歯磨きが難しい部分です。

もしも、抜歯後にセルフケアが十分にできなかったり、
クリニックでのメインテナンスを受けることができないと、プラークが停滞してしまいます。

そして、露出した根の表面は柔らかく、むし歯になりやすい歯です。

全体がうまく磨けていても、このような局所的にセルフケアが難しいところは、
お口にトラブルを抱えていないメインテナンス期間に入った方でも、
新たなむし歯を作りやすい要注意部分です。

7根面う蝕発生

7.ついに根の表面に虫歯ができてしまいました。

むし歯ができてしまいました。

8最小限の処置難しい

8.むし歯だけを削り、最小限の詰め物で治したいですが…

緑色のように最小限の範囲で削り、小さく詰めて治したいところですが、
実際には、このようにできないこともあります。

想像してみてください、一番奥の歯の後ろ側の一番低いところ…。
頭の後ろから手を入れたくなるような場所です。

治療用の器具がこの狭い場所にはとても入りにくく、お口の中では精密な処置ができないことが多いです。

9間接法

9.精密に治すためには、型取りして、お口の外で物を作り、歯にくっつける方法にせざるを得ないことが多いです。その場合、削る範囲は広くなりがち。

再びむし歯になりにくいように、精密に治すためには、
型を取って、お口の外で歯型上で精密に詰め物を作り、その後、お口の中で歯にくっつける方法にせざるを得ないことが多いです。

この方法だと、お口の中で直接治す方法よりも、歯を削る量が増えます。

図は少し大げさに削っていますが、健康な歯を失うことを避けることができません。

10修復後清掃難しい

10.せっかく精密に入れても、やはり掃除が難しい部分であることに変わりありません。

むし歯治療が終わっても、掃除がしにくい場所であることには変わりません。
再びプラークが付き始めてしまいました。

掃除しにくい位置関係になった原因は、元をたどれば、
親知らずを残していて、その部分がうまく掃除できなかった時期があったことです。

11二次むし歯

11.ついに新たなむし歯ができてしまいました。

詰め物と歯の境目から、むし歯ができてしまいました。

このように、一度治した部分に、境目などから再びできたむし歯を、二次むし歯と言います。

この先もまだまだ変化は続きます。

12.二次むし歯が深くまで進行、神経を取ることに。
13.神経を取った歯が、その後さらに感染し、再治療を繰り返し…
14.歯が薄くなり、割れてしまい、ついに抜歯

 

1.から14.までの変化は、

  • セルフケアのレベル
  • メインテナンス体制の有無
  • 受けた治療の質
  • 他の歯の状況
  • 噛み合わせ
  • 噛み合わせの癖

など、様々な影響を受けますが、
早いと10年くらい、長い場合は40年くらい(25歳→65歳)かかることもあるでしょう。

経過が長いために、どこが始まりなのか、
患者さまにはイメージできない場合が多いかもしれません。

欠損サイクル

このように、長い時間軸の中でどんどん起こっていく、
歯を失う変化を「欠損サイクル」と言います。

今回お話しした、一つの歯で起こる欠損サイクルだけでなく、
お口全体の中で、歯を失っていくサイクルのことを本来、「欠損サイクル」と言います。

 

お口の中全体の欠損サイクルとは、大まかに説明しますと、

1本の歯で、小さなむし歯の治療→悪化を繰り返し、その歯の神経を失う。

その後、再びむし歯になり根の治療を繰り返すうちに、歯が割れたり小さくなってしまいついに抜歯。

失った歯をブリッジや入れ歯で補う。その頃に歯周病が発症したり、他の歯に負担が増えることで、全体が悪化。

ドミノ倒しのように他の歯を失う。

最終的には全ての歯を失う。

という、全てが終わってしまうまでのサイクルのことです。

歯科の役割

私たち歯科の役割は、

・欠損サイクルを最小限で食い止める

または、健康な方へは、

・欠損サイクルに踏み込ませない

こととも言えます。

 

歯磨き練習をするのも、精密な治療をするのも、
欠損サイクルを止めるため、と言えますね。

 

歯を失ったり歯を削ることは、もう経験してほしくない、
と思いながら、少し悲しい気持ちで治療しています。

しかし、悲しんでいるだけでは何も変わりません。

日々の診療ではその悲しさをバネに、守ること=[予防]に大きなエネルギーを注いで、
皆さんに予防の考え方や大切さをお伝えしたり、実践しています。

 

一つの治療に見える処置も、欠損サイクルの中では、次の欠損につなげないための[予防処置]とも言えます。

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今回は親知らずの話からはじまり、長い時間軸の中で起こる変化についてお話しました。

 

体は悪くなってから、その大切さに気づいてしまうことが多いです。
そのとき悲しんでも戻ってこないこともあります。

 

できれば健康な状態を維持し、
できるだけ病気になる前の段階、未病の段階で予防しましょう。

今年は、全身の健康維持のための栄養学(=分子整合栄養医学)についても、お話していきたいと思っています。

 

では、良い週末を!

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、残す」藤井歯科医院