歯の中で広く進行したむし歯の、できるだけ削らない治療
こんにちは。
今日はむし歯のお話です。
自覚症状がなくても、中では広く進んでいることのあるむし歯。
今日は、むし歯の内部を見ながら、治療の経過を追ってみましょう。
写真は、20代の患者さまの奥歯です。
自覚症状は全くありません。
溝が茶色くなっていて、全体的に歯の中に黒い色が透けているように見えます。
レントゲンだと、
むし歯は黒く写るのですが、このレントゲンでは、明らかに黒く見える部分はないように見えます。
でも、よく見てみると、
表面の固いエナメル質の下にうっすら色の濃い部分があります。
歯の噛み合わせの溝の一番奥から細菌が侵入し、中で広がったようです。
入り口を削ってみると、
むし歯の奥の方は、内広がりの空間として広がっているようです。
横から見ると、
表面の健康な歯の裏側には、まだまだ黒いむし歯が続いています。
さらに別の角度では。
拡大します。
中央の溝の奥に、白く濁った部分が見えます。
ここでは、さらに奥へとむし歯が続いています。
むし歯の部屋とむし歯の部屋が、細かいヒビで繋がっていて、どんどん奥に進んでいます。
さらにむし歯を取ります。
別アングルでは
入り口よりも中がずっとえぐれていて、広いことがわかりますか?
このむし歯は、中で横方向に広く進行しています。
拡大視野+ライトの効果
歯の中で広がったむし歯は、取り切る必要がありますが、
表面の健康な歯は、できるだけ削らないで残したいです。
そのためには、表面の歯を触らないようにするために、
器具を斜めから入れて内開きの穴にして、慎重に削っています。
そして、そのような細かい処置を行うためには、
拡大視野でライトを当てながら、色々な方向からよく見る必要があります。
そうすることで、削る量を最小限に抑えて、健康な歯をできるだけ削らないで進めることができます。
拡大視野による治療では、健康な歯をできるだけ削らないで、最大限守ることができます。
裸眼の視野で行う治療では、見える大きさに限界があるので、
入り口の穴をもっと大きくして、裸眼でもよく見える視界を確保する必要があります。
そして、裸眼の治療では小さな器具を使ってもよく見えませんので、
ある程度大きな器具で間に合います。
そのため、一度に削る量も多くなり、
治療時間は短くなるでしょう。
しかし、拡大視野に比べ、
削る必要のない大切な歯を削る量も、どうしても多くなると考えられます。
拡大視野による治療では、健康な歯に触れないで、必要な部分だけをピンポイントで削れるように、
ドリルも小さいものを使います。
削ったら二度と戻ってこない大切な歯を守るためには、拡大視野による治療をおすすめします。
担当の先生が、治療中にルーペや顕微鏡を使っているか確認してみてください。
むし歯を削ったあとの「確認」
むし歯が取れているか確認するときに、歯が濡れていると表面の質感がよく見えません。
そのために、少し削ったら水気を乾かしてから、ミラーで色々な方向から見て確認します。
そしてまた少し削ったら、乾燥、確認、と、毎回確認するためだけでも、
どうしても時間がかかってしまいます。
しかし、大切な歯を守るためには、省略できないステップです。
本当に歯を守るためには、どうしても時間のかかる処置があることを、
ご理解いただきたいと思います。
各ステップを確実に
削る、確認する、という当たり前に見える基本的なステップでも、
よく見て、一つ一つを確実に行うことで、その歯の治療成績は大きく上がり、
結果的に、再発防止、長持ちにつながります。
やはり、基本をしっかりおさえて進めることが、大切です。
さらに別アングルです。
少し角度を変えるだけで、内側がよく見えてきます。
先ほどの白く濁っている部分の奥には、まだまだむし歯がありそうです。
中がボソボソしている感じがわかりますか?
裸眼ではこの「質感」は見ることができません。
高倍率の拡大鏡か、マイクロスコープのみで見ることのできる世界です。
さらにむし歯を取ります。
だいぶ取れました。
ギリギリまで残していた真ん中あたりの表面の健康なエナメル質は、
残念ながら薄くなりすぎて強度が保てないので、残すことができませんでした。
むし歯を取り切れたかを確認するために、
むし歯だけを染める液で染めます。
液をつけて、
洗い流すと…
青く色が残った部分があります。
青い部分は、まだむし歯があるということです。
自分ではもう取りきったと思っていても、
この液を使うと、このようにまだ残っているところを教えてくれます。
この液は、う蝕検知液と言います。
むし歯の取り残しを避けて再発を防止し、長持ちさせるためには、
- 拡大診療
- 確実な各ステップ
- う蝕検知液を使う
など、おさえておきたいポイントがあります。
その後、青い部分だけ削る→再度染める→洗い流す→乾燥→確認を、何度かを繰り返します。
このステップも、時間がかかりますが、飛ばせない大切なステップです。
むし歯を取りきりました。
今回の治療では、
中のむし歯を必要最小限の量で、慎重に横方向から削り、
表面の健康なエナメル質をできるだけ削らないで、むし歯を取りました。
将来のためには、削った後の復元の仕方などの前に、
まずは、いかに健康な歯を残してむし歯をとるかが、とても大切です。
この後、形を仕上げて、詰める作業に入って、
大きなむし歯でしたが、1回で治療完了です。
次回、来院時に治療後の経過と、治療跡の不具合がないか確認する予定です。
詰めた後は、「吸水膨張」といって、材料が水分を吸って膨張するので、
その膨張があれば、再研磨する予定です。
いかがでしたでしょうか。
この歯は元々、自覚症状がありませんでした。
むし歯がここまで大きく深く進行してしまっていても、
外とつながっている入り口の穴が小さいために、中に刺激が入らず自覚できないことがあります。
そして、自覚できるまで進行した場合には、歯が受けるダメージが強くなっていることがほとんどです。
しばらく歯科から遠ざかってる方は、異常を感じる前に何もなくても、
検査とクリーニングのために歯科医院を受診し、ご自身の現状を把握しておきましょう。
その時点で治療の必要がないことが分かれば、それは大きな成果です。
また、
もしも治療が必要な歯が潜んでいた場合には、被害の少ないうちに治しておきましょう。
どちらの場合にも,将来の為に大切なのは、その後です。
それからは、問題が発生しないようにするために、
セルフケアの習慣を確実にし、定期的なメンテナンスを続けましょう。
いつも清潔なお口を維持することで、健康なお口を作り続け、
大切な体を守りましょう。
一度しっかり治したら、セルフケアとメンテナンスで維持することが、
長い目で見たら一番楽なんですよ。
今日はむし歯の状態の説明と治療の話で始まりましたが、
やはり最後は予防の大切さに行き着いてしまいました。
何を話しても、本当にお伝えしたいのはその部分であることは、いつも変わりません。
正確な診断と、精密な治療、一人ひとりに向き合ったメンテナンスで、
お口のトラブル知らずの人生にしましょう!
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、残す」藤井歯科医院