度重なるむし歯でたくさん失った歯を、かぶせずに1回で治療

こんにちは。

一つの歯で何度もむし歯を繰り返していると、たくさんの穴が開き、
いずれその穴が繋がって、いよいよほとんど自分の歯がなくなってしまいます。

その頃には神経までむし歯が到達してしまったりして、被せ物になることも。

今回は、過去のむし歯治療とその二次むし歯で、
ほとんど自分の歯がなくなるまで歯を失った前歯を、被せものにしないで1回で治す方法のご紹介です。


一つの歯で何度もむし歯にかかって、その度に詰め物で治していくと、
いずれは穴が繋がって自分の歯がほとんど無くなってしまいます。

その場合は、

  1. 残っている歯を削って、被せ物で治す
  2. 残っている歯は残したまま、範囲の広い詰め物で治す

の2択です。

今回は、2.の方法で出来るだけ自分の歯を残すことにこだわった治療のご紹介です。

 

治療時間は長くかかり、お口の中での処置(形や色合わせ)も難しいので、
患者さまも歯科医師も大変ですが、自分の歯を最大限残すという大きなメリットがあります。

では、経過と共に見てみましょう。

度重なるむし歯治療で継ぎはぎになり、さらに二次むし歯になってしまいました。

度重なるむし歯治療で継ぎはぎになり、さらに二次むし歯になってしまいました。

過去に何度もむし歯になり、その度に治す必要があったため、
どうしても継ぎはぎになってしまいます。
裏側と先端は、歯が欠けてしまっているようです。

なってしまった場合は仕方ないのですが、こうならないために、
やはり普段のセルフケアとプロフェッショナルケアが大切です。

古い詰め物と、その周りのむし歯を取ります。

全て取り切ると、自分の歯はこれだけになりました。

全て取り切ると、自分の歯はこれだけになりました。

詰め物とむし歯を一通り取り除くと、自分の歯はこれだけになってしまいました。

まだむし歯が残っているかもしれませんので、色をつけて調べてみます。

むし歯だけに色をつけてくれる液で調べます。

むし歯だけに色をつけてくれる液で調べます。

手の感覚とむし歯の色だけを頼りにむし歯を削ると、取り残している可能性があるので、
むし歯を青くしてくれる液をつけて調べます。

液を塗って洗い流すと、

青くなっている部分は、むし歯です。

青くなっている部分は、むし歯です。

わずかに青くなっているところがむし歯です。

青くない部分を触らないようにしながら、注意深く青い部分だけを細かく削っていきます。

慎重に取り切ったらまた染めてみて、またそこだけ削る、
を何度か繰り返してむし歯を取り切ったら、次は詰めるための準備です。

むし歯を取り切ったら、詰めるための準備です。

むし歯を取り切ったら、詰めるための準備です。

左:むし歯を取り切ったところです。 右:詰める前の歯への表面処理です。

この歯を取り囲む歯ぐきの健康維持のためには、歯ぐきの近くの詰め物が歯に段差無く、ぴったりに詰められている必要があります。

ぴったり詰めるためには、残っている歯の境界がはっきりと見えている必要があります。

そこで、ポケット内に歯肉圧排糸(しにくあっぱいし)をいれて、一時的に歯ぐきを押し下げます。
上の写真の歯ぐきのキワに黒く見えているのが、それです。

こうすることで、境界線がよく見えるので、ぴったりに詰めやすくなります。
また、湿っている歯ぐきを詰める場所から遠ざけることにもなり、接着の大敵である「水分」のない状態で詰めることができます。

 

もし、歯の表面に水分があると、詰め物は歯にくっつきません。
しかし、その場ではくっついているように見えるので、すぐには取れないのがまたクセモノです。

くっついていない部分には見えない隙間があり、そこでは気付かないうちに、
むし歯菌がせっせとむし歯を作ってしまうこともあるでしょう。

歯肉圧排(しにくあっぱい)は、詰め物の二次むし歯を防ぎ、長持ちさせるためにとても大切なステップです。

 

さて、ここまで終わったらいよいよ詰め始めます。
詰めるのにも、いくつかの段階があります。

裏側の壁作りから始まります。

裏側の壁作りから始まります。

左:まず裏側に壁を作ります。

右:歯の色ができるだけ自然に見えるように、数種類の色を選択して、重ねていきます。

詰め物の種類は、色の違いだけでなく、光の透過性の違いもあります。
光が詰め物をたくさん透過すると、「口の中の色=黒い影」が透けて見えてしまい、
仕上がりがグレーっぽくなってしまいます。

そこで、光を透過しない色を重ねて、透過する光の量をコントロールします。

 

この後、両サイドの歯との間の部分も作って…

7finish

何段階か研磨して、完成です。
(色がとなりと違うのは、今後となりの歯も合わせて治すためです。)

8比較

今回は保険診療の材料を用いた治療なので、使える色の種類に制限があります。
そのために、例えば、透明感が出しにくいことが挙げられます。
保険適応外の材料を用いれば、本来の歯の持つ透明感、自然感が出しやすくなります。

 

こうして、ずっと集中して1本の歯だけを見て治療していると、
自分が作っている歯の形の不自然感などに気付けなくなることがあるので、
このように写真を撮っておき、客観的に見ながら振り返り、問題があれば
次回来院時に修正することもあります。

また、治療はやりっぱなしにせず再評価が必要ですので、
次の回が始まるときに、治療後の症状、色形の不具合などを伺います。

 

治療した歯が長持ちするためには、精密な治療は必要ですが、
毎日のセルフケアと定期的なメインテナンスが大切です。
(セルフケアとメインテナンスについては、
予防歯科(歯の間のセルフケア編)予防歯科(メンテナンス編)もご覧ください。)

一度治療した歯を再び悪くしないために、日頃から綺麗にしておきましょう。


ここまでお読みいただき、おつかれさまでした。

本格的な梅雨空の前に、お天気が続きますね。

明日は顎関節症の勉強会に出席です。
この週末は、各地で学会や勉強会が開催されています。
どれも行きたかったですが、今回は近場で出席です。

みなさま、素敵な週末を!

 

皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁

名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、
総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院