破折ファイル除去:根っこの中で折れて詰まっていた器具を取り除く。
こんにちは。
今日は、根の中の異物(破折ファイル)除去のお話です。
神経を取った歯は、根っこの中に細菌が多く存在していると、その影響で周りの歯ぐきが傷んでしまいます。
その場合に行われる根の治療というのは、歯の内部に住み着いた細菌などの感染源をクリーニングし、歯の中をできるだけ無菌状態に近づける処置です。
実は、根の病気になった歯の中には、細菌が単独で存在しているだけではなく、
過去に詰めた材料が細菌感染していたり、過去に取り残された神経が細菌の餌になっていたりと、
様々な感染源が混在しています。
今回は、そんな複雑な環境の歯の中に存在する異物(過去に折れて残っていた器具)を取り除く治療のお話です。
治療するのは、奥から2本目の歯です。
レントゲンからは、
- 歯の中に細菌が住んでいて、歯の周りの骨が溶けている様子がわかります。
そのほかに、
- 奥の銀歯2本は、つながっているために、毎日のセルフケアが行いにくい。
- 被せ物と歯の境目がぴったりではない。
これらの問題点を解決するために、歯の中から被せ物まで一通り治療することになりました。
被せ物を外すと、よくわかりますね。
黄色で囲まれたのが、破折ファイルです。
ファイルというのは、根の中をきれいにする器具です。
この先端が折れて、噛み込んだまま残っていたようです。
残っているファイルから先の根管内は、クリーニングがされないまま放置されていると考えられます。
このファイルを除去したら、その先の根管内をクリーニングして、この歯から感染源を無くします。
根の中は暗く小さいために、裸眼による治療では行える処置に限界があります。
高倍率の拡大スコープとライトによる視野で治療します。
そのほかに、ラバーダム、超音波チップといった根管治療の必需品を用いて進めます。
これらがないと、破折ファイル除去はかなり難しいかと思います。
実際のお口の中は、
ファイルは、歯に食い込んでいて動きません。
破折ファイルの周りの歯は、残っていた細菌で感染して変色しています。
拡大視野下で、超音波チップを用いて少しづつ隙間を作り、ファイルにも振動を加えながら進めます。
破折ファイルがよく見えてきました。
ニョキッと出ている金属が見えるでしょうか。
ここまで隙間があれば、安心です。取ることはできそうです。
ちなみに、もしこの状態を裸眼で見ようとして、チェアのライトを当てても、
真っ暗でほとんど何も見えません。
超音波チップでさらに振動を加えていくと、ファイルを取ることができました。
その後、除去したファイルの周りや、その他の部分も薬液と超音波チップできれいにします。
破折ファイルのあった根管の中は、さらに感染した歯を取り除く必要がありそうです。
薬液に浸しながら、超音波チップで少しづつきれいにしていきます。
過度な歯の削除は、根を構成する歯を薄くすることになり、歯の強度を下げることにつながります。
根管治療には、「感染源を残さずに強度も保つ」という大切な課題があります。
このあと、他の感染した根管もきれいにします。
今回除去した破折ファイルはこちら。
レントゲンです。
上から順に、破折ファイル除去前、除去後、根管充填後(根の治療の最終段階)です。
今回、破折ファイルの先の根管は、治療されない長期間に歯の内部で起こった変化のため、
根菅の先端まで完全にクリーニングすることができませんでした。
現在痛みなどの自覚症状や、膿が出るなどの炎症症状はありません。
今回の処置によって治癒に向かうかを経過観察し、もしもさらなる処置が必要と判断した場合には、
次の手である外科的歯内療法に進むか、患者さまと相談して進めます。
根の治療の大事なこと
根の治療は、拡大視野、超音波装置、ラバーダムを用いて精密に行うことで、
治療の成功率が上がります。
一度神経の治療をしたあとに、数年ごとに不調を繰り返すのは、
「ただ、歯の中の感染源が取りきれていないから」だけかもしれません。
そして、精密な治療を受けることで、歯の中から感染源がなくなり、
繰り返し悪化するサイクルから抜け出せるかもしれません。
歯は治療を繰り返すほど、状態が悪化していきます。
行き着く先は抜歯です。
どのような治療を受けるかは、とても大切です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
お疲れ様でした。
明日日曜日は、マイクロスコープのセミナーに参加します。
暖かい日と涼しい日が、繰り返されますね。
お体に気をつけて、素敵な週末をお過ごしください!
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、残す」藤井歯科医院