神経を取った歯のその後(後編)

こんにちは。

前回と今回で、神経を取った歯に起こる変化についてお話ししています。

後編の今日は、歯の変色と細菌感染の話です。

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神経を取った歯に起こる変化

前回の確認です。

神経を取ると、主に以下の3つの問題が起こります。

  1. 歯が薄く、小さくなるので、強度が落ちる
  2. 歯が変色する(黒っぽく)
  3. 神経を取った空間にたくさんの細菌感染が起こると、別の病気に移行する。

今日は、2.と3.のお話しです。

2.歯が変色する

元々神経だった組織が、象牙質に染み込むことで歯が黒っぽく変色します。

適切な治療で行うほど、変色の程度は軽いと言われていますが、完全に防ぐことはできません。

また、変色歯の白さを回復する場合は、削って白い被せ物にする方法の前に、
歯のホワイトニングを考えたいものです。

ただ、噛み合わせや残っている歯の強度の問題もありますから、被せた方ががいい場合もあります。
担当の先生とよく相談して決めたい部分です。

3.神経を取った空間に細菌感染が起こると、別の病気に移行する。

元々、歯の中に神経があった頃、そこには血液も流れていました。
血液には、様々な免疫成分が含まれています。

つまり、歯の中に免疫力があったわけです。

ところが神経を取ってしまうと、そこには血液もありませんから、免疫力もありません。

なのに、歯の中は虫歯や不適切な治療により、一度、外の世界(バイ菌)とつながってしまいます。

細菌感染進む

もしも、細菌をたくさん歯の中に残したまま、治療を終えてしまうと、
残された細菌たちは、その後、誰からも攻撃を受けることなくぬくぬくと増殖します。

そして、根の先端の穴から、歯の外へ出てしまいます。

そこは歯ぐきの中です。

歯ぐきには血液があるので、そこで初めて免疫力と出会います。

免疫細胞は細菌を発見すると、体を細菌から守るために、戦い(炎症)を起こします。

炎症の結果、歯を支える大事な骨を溶かしたり、痛みを出したりします。

このように、神経を取った歯に細菌感染が起こってから、
症状として感じたり、発見されるまでには、

  1. 神経を取る治療を受ける
  2. 歯の中に取り残された細菌が増える
  3. 細菌が歯の外に出る
  4. 歯ぐきの免疫部隊が細菌を攻撃(炎症反応)
  5. 炎症症状として、骨が溶けたり、歯を支える組織が痛む
  6. 噛むと痛い、レントゲンで骨が溶けている様子が発見される

と、これだけの経過を取ります。

 

神経を取った歯が忘れた頃に痛くなるのは、このためです。

神経がないはずなのに痛いのは、神経が痛いのではなく、根を支える歯ぐきが痛いのです。

この病気は、【根尖性歯周炎】といいます。

根尖性歯周炎の特殊性

神経を取る治療の後、根尖性歯周炎になる確率は、

ラバーダムなどを用いて、丁寧に治療を行った場合 :約10%
日本の一般的な保険治療を行った場合        :50%以上

というデータがあります。
(治療歯の状況、歯科医師の技術的な問題によって変動すると考えられますが、一つの「データ」です。)

 

この原因は、根の中の構造や、治療の限界など、様々なことが影響しています。
原因や、再発防止方法など、細かいことはまたの機会にお話ししたいと思います。

 

一度神経の治療を受けると、
最低でも約10%、受けた治療によっては、50%以上が根尖性歯周炎になる、
ということは、怖いことですよね。

ちなみに、一度根尖性歯周炎にかかると、次にまた再発する率はどんどん悪くなっていきます。
その先に、いよいよ抜歯があります。

根尖性歯周炎を防ぐためには

再発を抑えるのが難しのならば、大切なことは

  • そもそも神経を取らない
  • 神経を取る場合は、科学的根拠に基づいた方法で正確、精密に行う

です。

一つ目のそもそも取らない、についてはふざけている訳ではなく、
防ぐことが難しい病気に移行することがわかっているからこそ、取らないことの大切さが一番なのです。

なので、MTAを用いた歯髄保存法など、とにかく打てる手はすべて打ちたい訳ですね。

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2回にかけて、神経を取った歯に起こることについて解説しました。

  1. 弱くなる
  2. 変色する
  3. 再発しやすい別の病気に移行しやすい

でした。

そして、防ぐために大切なことは、

  1. 予防を頑張る(日々の歯磨きと、定期的なメインテナンス)。
  2. 深いむし歯ができても、神経を残す治療で残すことに執着する!
  3. 神経を取る場合は、科学的根拠に基づいた正確、精密な治療を受ける。

です。
頑張りましょうね!

皆さんの大切な歯が、1本でも神経の治療を受けなくてもいいように、
今日の内容がお役に立てると嬉しく思います。

 

大切な歯を守って、お口にストレスのない生活を送れますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁