神経を取ったのに、歯が痛い!
前回、神経を取った歯にその後起こる変化についてお話しました。
一度神経を取った歯に細菌感染が起こると、
「根尖性歯周炎」と言って、根っこの奥の歯ぐきが痛む病気になることがあります。
今日は根尖性歯周炎についてお話します。
Drawquest — Creature has a toothache / vinally
前回の記事で根尖性歯周炎は、歯の中の細菌感染が原因で起こると書きました。
細菌感染が原因で起こる病気、と聞くと、よく耳にする感じかもしれませんね。
でも、神経を取った歯の場合は、とても複雑な状態なのです。
そして、このことが何年もかけて繰り返してしまう、高い再発率につながっています。
いったいどのように複雑なのでしょうか?
- 神経を取った歯の中では、細菌は何からも攻撃を受けない。
歯の中の空間は、迷路のように複雑で掃除しきれない。
1.神経を取った歯の中では、細菌は何からも攻撃を受けない。
体は日々、いろいろな外敵と戦っています。
例えば、細菌やウィルス。
数えられないほどの細菌やウィルスからの攻撃を受けながらも、
私たちが病気にならずに健康に生きていけるのは、生体が持っている免疫力のおかげです。
具体的には、血液に含まれている白血球のおかげですね。
健康な人では、血液があればそこには白血球があり、免疫力が働きます。
体内に細菌が存在すると、白血球が攻撃することで、私たちの健康は保たれます。
しかし、なんらかの理由で白血球が働けない状態だと、細菌の勢力が優勢になります。
例えば、喫煙。
歯の根元に汚れや細菌が付いていると、歯ぐきに血液をたくさん流して、
たくさんの白血球を集め、細菌に抵抗しようとします。
ところが、タバコを吸っていると、歯ぐきの血流が抑えられてしまいます。
ということは、血液に乗って運ばれてくるはずの白血球の量も減ってしまいます。
歯ぐきの中では、免疫力で細菌に抵抗しようとしています。
しかし、白血球が運ばれにくいので、十分に戦うことができません。
そのために、タバコを吸っている方は、歯周病の進行が早く、程度も強いです。
歯周病については過去の記事にも書いています。
神経を取った歯の中はどうでしょう。
神経があった頃は、血液も流れていましたので、免疫力がありました。
しかし、神経を取ると、血管も無くなります。
免疫力はゼロになってしまっています。
もしも、神経を取った空間に細菌が存在すれば、
全ての治療終了後にも、免疫力からの攻撃を受けずに、ぬくぬくと生きることができます。
ゆっくりと増えた細菌たちは、ついには、歯の外へと勢力を広げ、
歯の周りの骨を溶かすなどの被害を出し始めます。
神経を取った後、忘れた頃に症状が出るのはこのためです。
2.歯の中の空間は、迷路のように複雑で掃除しきれない
そして、一度細菌が住み着くと、完全にバイ菌をゼロにすることはできません。
これは歯の中の神経があった空間が、迷路のようになっているからです。
歯の中の神経があった管(「根管(こんかん)」)は、イラストでは
このように書きますが、実際には、
こんな形のものもあります。
2本と見せかけて、合流して一本。
そして尖端では、細かく枝分かれ。
枝分かれのことを「側枝(そくし)」と言い、根の先端3mmに多くみられます。
他には、
網目!(掃除できそうに見えますか?)
そして、左側の根管は途中で3本くらいに分かれて、その先で合流しているように見えますね。
実は、これらの複雑な根管のうち、器具を入れることで神経を取ったり消毒できるのは、基本的には一番太いもの(国道?)だけです。
側枝(県道)や網目など(町道)に器具を入れるのはとても難しく、触ることができないことが多いです。
(拡大視野で治療すると見える範囲で、または見えなくても枝分かれなども扱えることは、稀にあります)
そして、それら処置できない根管は、薬液の消毒に期待するのみです。
しかし、消毒の効果は一生ものではありません。
もし、一度細菌感染を起こしてしまうと、二度と細菌を完璧に取る除くことはできないということです。
一度あの複雑な構造の中に細菌が入ったら、それっきり、とは怖いですよね。
根尖性歯周炎にならない、または、再発させないためには
最も大事なことは、難しい形の根管をいかに掃除するか、ではありません。
本来、細菌感染していないこれら複雑な根管内を、治療によって余分に細菌感染させない
ことです。
具体的には、
- むし歯を取り残さない(拡大視野でよく見る、時間をかけるところにはしっかりかける)
- 唾液や血液など、感染の可能性のあるものを根管内に入れない(隔壁、ラバーダムなどで防ぐ)
ことが大切です。
これをやればいいというわけではなく、他の処置も含めた総合的な結果が大切ですが、
この2点をしっかりするだけでも、歯の寿命が格段に変わります。
これらの詳細については、他の記事でも書いています。(いつも同じリンクでごめんなさい)
拡大視野、ラバーダム、隔壁
しかし、どれも患者さまには努力のしようがないところが、難しいポイントかもしれませんね。
そういう治療をしてくれる歯医者さんに治してもらう以外に、方法はないです。
医療は人の行うことです。
誰が行っても、完璧はないかもしれません。
しかし、医療としてこれら2点を守るなど、正しいことを行おうとしているかは、
人の仕事なだけあって、差が出るのかなと私は思います。
そして患者さまにお願いしたいのは、
まずは普段から歯磨きをしっかりして、病気をつくならいこと。
予防が第一です!
ここまでお読みいただき、お疲れ様でした。
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区にある、歯周病、インプラント、審美歯科、予防歯科まで、
総合治療の藤井歯科医院