神経が死んで黒く変色した前歯の治療
こんにちは。
今回は、神経を取った後、黒く変色した歯の治療のお話です。
過去に、神経を取る治療を受けた2番目の前歯が、黒く変色してしまっています。
裏から見ると、2番目の歯には金属の詰め物がしてあります。
横から見ると、手前側の歯の側面には黒いむし歯があります。
そのむし歯は裏側にも広がっています。
レントゲンでは、
歯が変色しただけではなく、大切な歯を支える骨が溶けているのがわかります。
これは、神経を取った時に、神経のあった空間(歯髄腔:しずいくう)に適切な処置(根管治療)を行っていないために、
できてしまった病気です。
歯髄腔に住み着いた細菌たちのせいで、神経の出入り口である先端の穴の外側では、免疫細胞との戦い(=炎症反応)が起こります。
その炎症反応によって、体は自ら、歯の周りの骨を溶かします。
このまま歯の中に細菌が存在し続ければ、慢性の炎症反応が続きます。
その結果、痛みや歯のグラつきが出て、日常生活に影響がではじめるでしょう。
全身的な影響
また、体内に慢性炎症があり続けることは、
全身の老化、認知症、生活習慣病の発症に強く関与することがわかっています。
病気の進行を表す川があるならば、
最下流に、脳梗塞や糖尿病、心疾患など
最上流に、歯周病、むし歯などの慢性炎症
となり、慢性炎症に対する治療や予防処置が、将来の全身疾患の予防に結びつき、
健康寿命を延ばすことに大きな役割を果たします。
こちらも併せてご覧ください(歯周病と全身疾患を予防して、健康寿命を延ばす!)
というわけで慢性炎症の原因である、歯の中の細菌を綺麗に取り除く治療(根管治療)を行います。
そのまえに、まず、隣の歯のむし歯治療です。
つづいて、変色した歯の根管治療。
まずラバーダムを装着し、清潔な環境作り。
裏側の金属と、表側の白い詰め物を外します。
入っていたものを全て外すと、歯が半分くらいなくなってしまうので、樹脂で歯を復元します。
後ろの壁を作って…、次に、側面を作って…、色が自然に見えるように何色も重ねて…と、
時間はかかりますが、大切なステップです。
金属やその周りのむし歯を取ると、黒い変色はあまり気にならなくなりました。
あの変色は、歯自体の変色の他に、金属の色が透けていたのも原因だったようです。
しかし、歯の変色自体はやはり起こっていますので、根の治療が終わってから、
歯の中から行う、この歯1本のホワイトニングをするのが理想です。
まずは、根管治療を始めます。
今回は前側に穴を開けると根の中がよく見えるので、治療中は穴を開けて、
治療が終わったら、その穴を樹脂で埋めて、お帰りいただくようにしました。
これで、治療期間中も、不具合なく過ごせます。
根管治療を3回で終え、治療前後のレントゲンを比較すると、
左:治療前
右:3回目直後(治療開始から約2ヶ月経過)
1回目の根管治療から約2ヶ月で、骨ができているであろう様子が確認できます。
自覚症状もなく、治癒に向かっていると判断できます。
今後、さらに3ヶ月、6ヶ月と経過をみて、治癒の確認をしていく予定です。
根管治療が終わったら、この歯のホワイトニングをする予定でしたが、
患者さんのスケジュールの関係で、今回はホワイトニングはしないことになりましたので、
根管治療前に詰めた白い樹脂を一度外し、やや変色した歯の色に合わせてダイレクトボンディングを行います。
ホワイトニングを行う予定でしたが、治療前よりは許容範囲の色になったと
患者さんは判断なさいましたので、今回はここで終了です。
治療前
治療後
「神経を取った歯は、削ってかぶせる」
や、
「神経を取って変色した歯は、被せ物で白くする」
のではなく、
ご自分の歯を最大限残して、色や形を回復できたのではないでしょうか。
削ったら最後、二度と戻ることはできません。
基本を大切に、そして最大限、歯を残す治療を行います。
その先には、お口のことでストレスを感じない、明るく健康な時間を過ごしていただきたいと思います。
皆さまが快適なお口で、楽しい毎日を過ごせますように
藤井歯科医院・副院長
藤井芳仁
名古屋市天白区植田
歯周病、インプラント、審美歯科、歯内療法、予防歯科、総合治療の
「大切な歯をできるだけ削らない、歯と神経を残す」歯医者|藤井歯科医院